近藤真彦さんが個人で購入した「マッチのマーチ」。MT車が欲しかったけれど、手に入れたお気に入りの赤い個体はAT車。さぁ、困った!! ここでMT換装作業を名乗り出たのが日産自動車大学校の学生たちだったのだ。ついに完成したマーチのレストア風景をご覧あれ！
※本稿は2025年12月のものです
文：ベストカーWeb編集部／写真：奥隅圭之、日産・自動車大学校、ベストカーWeb編集部
初出：『ベストカー』2026年1月26日号
ぱっと見はとても綺麗だったけれど
我らが近藤真彦さんが、自身がイメージキャラクターを務めたK10マーチを手にしたのが昨年11月。「マッチのマーチ」として一世を風靡したモデルだ。手に入れた真紅のマーチはATだったが、マッチさんはＭＴモデルを希望……。すでにお伝えしているように、ここから日産自動車大学校の学生（と先生）の挑戦が始まる。
まずマッチさんが手に入れたマーチは、外観はパッと見は綺麗なものの、日産校の学生と先生から見れば修復箇所は山ほど。まずは栃木校でエンジンを下ろす。MTを提供する部品取り車から状態のいいパーツも含め、赤いATマーチに換装するのだ。僭越ながら編集担当も試乗したが、断然部品取りのマーチの変速フィールはよかった。
ただこのミッション乗せ換え作業の発生が実はのちの愛知校の大作業に響くのだが、それはまた後ほど。栃木の学生たちは普段目にしない大きなエアクリーナーなどに目を丸くしながら、固着した部品の取り外しなど先生に教わり完全な状態でバラしたぞ。令和になってディストリビューターを見るなんて、貴重なチャンスだったはず。
煩悩と同じくらいの凹みがあるって!?
マーチは横浜校に陸送され、今度は足回りの分解や整備に移る。特殊な構造の足回りなので、ここでも学生の目はどんどん丸くなっていた。簡素だがしっかりとした構造、バラせばバラすほど学びは深くなるが、マッチさんの愛車だけに取り扱いは実に慎重。
しかし優しさだけではパーツが外れないのも旧車の世界。先生たちが見せるお手本は、一見すると思い切った工具使いだった。しかし実は経験に裏付けられた適切なトルク管理がなされていて、まさに「生きる教材」。うらやましい!!
パーツがとられてさっぱりしたボディは京都校に。実は京都校は塗装ブースが4つもある校舎で、板金塗装の匠の先生もいる。学生がボディの凹みを数えるとなんと107箇所!! ほぼ除夜の鐘。このデントをすべて直し（もちろんパテで誤魔化すなんてしない）、オリジナルカラーで全塗装を実施。しかも学生のアイデアでなんとフロア下に自己修復塗料の「スクラッチシールド」も施工。世界で１台だけ!? の超豪華な塗装が施されているスペシャルマーチだ。
最後に待っていた苦難と総仕上げ
続いて愛媛校でエンジンは整備され、愛知校で足回りとエンジンとボディがドッキング。これにて一件落着と思いきや、なんと大変なことが発生してしまう。
なんとハーネスの互換性が惜しくも合わず、ハーネスを作り直してインストールすることになったのだ。もちろんレストアをしていると「あるある」なのだが、このハプニングでまた現場は強くなった。ハーネスは先生が緊急当番で急場を凌いだ。仕上げられたボディに傷をつけるわけにはいかないので、部品をつけていく学生も手に汗を握る展開だ。
ようやく整備が終わったマーチは愛媛校で仕上げを受けて、お祓いを実施。しまなみ海道を試走するマーチに感涙。5校を巡ったマーチ、今はマッチさんのガレージに収まった。新年の東京オートサロン、日産ブースで展示するのでぜひ学生の力作を見てほしい!!
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