巨大な自動車マーケットである中国市場の動向は、中国市場のミニチュア版といった動きを見せるタイ市場を観察していればある程度把握できる。だが、中国市場とタイ市場の関係はそれだけに留まらない。両者のもうひとつの関係とは!?
※本稿は2026年1月のものです
文:鈴木直也/写真:スズキ、ダイハツ、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2026年2月10日号
中国自動車メーカーにとっての「タイ市場」
なぜ、タイ市場は中国の動向とリンクするのか。それは、中国とASEANを結ぶFTA(自由貿易協定)の存在と、中国国内の過剰生産問題がある。
ニュースなどでも話題になっているが、いま中国の自動車産業は深刻な供給過剰に陥っている。在庫を捌く場所として誰もが目をつけるのが、関税障壁がなく物流も容易なタイというわけだ。
タイのビジネス経済メディア「THAIBIZ」のレポートが指摘する事実は興味深い。
建前では、タイでは中国メーカーによる現地生産(KD)が進んでいるとされているが、実態は完成車に近い形での輸入が数多く含まれる。そのため、タイ国内の部品サプライチェーンに充分な発注が落ちず、産業構造が痛み始めているという側面があるというのだ。
これは、タイ市場が中国にとっての「在庫調整の緩衝地帯」となっていることを意味する。
中国でモデルチェンジや生産過剰が発生すると、旧モデルや余剰在庫がタイへ押し出される。タイ市場で「値下げ」や「新モデル投入」として販売される。
つまり、タイで突然の大幅値下げが起きたなら、それは「中国本国で在庫が積み上がっているサイン」と読み解くことができるわけだ。
周辺諸国もタイのEV市場動向を注視する
中国の影響力はタイ一国にとどまらない。インドネシア政府は2025年から、HEV(ハイブリッド車)に対する税率を大幅に引き下げる方針を打ち出した。これは、先行してBEV優遇策をとったタイの現状を「反面教師」にした結果だ。
急激なBEV優遇策を講じた結果、中国製完成車の流入急増による国内サプライチェーン産業の疲弊に直面しているタイ。これを見てインドネシアはBEV一本足打法を避け、裾野の広いHEV産業を保護・育成する現実路線へシフトしつつある。周辺国もまた、タイを「実験市場」として注視しているのであった。
つまり、タイ市場は中国自動車産業の巨大な変化を先取りして映し出す、精度の高い先行指標と見ることができるわけだね。
【画像ギャラリー】タイ市場は中国メーカーの「在庫調整」の場か!? タイ市場と中国&周辺他国の自動車市場との関係(8枚)画像ギャラリー










コメント
コメントの使い方