ホンダは2026年3月12日、衝撃の公式発表を実施。2025年初頭の「CES」で世界を沸かせた「Honda 0シリーズ」が、まさかの開発・発売中止になるという。北米生産予定だったEV3車種をすべて葬り去る衝撃の決断を、ホンダが正式発表したかたちとなる。業績予想は大幅赤字へ。一体何が起きたのか、そしてホンダはこれからどこへ向かうのか。
文:ベストカー編集局長T、写真:本田技研工業
「Honda 0 SUV」「Honda 0 Saloon」「Acura RSX」——3車種がすべて消えた
2025年1月5日、ホンダは米国ネバダ州ラスベガスで開催された「CES 2025」にて、「2026年にグローバル市場へ投入を開始する」という宣言とともに、新型BEVシリーズを世界初披露した。
公開されたスタイリッシュなシルエット、「Thin, Light, and Wise」というキャッチコピー——華々しくお披露目された「Honda 0シリーズ」が、本日の発表で開発中止と宣言され、事実上、当面葬られることになった。

ホンダが今回、開発中止を決定したのは、北米での生産・発売を予定していたEV3車種「Honda 0 SUV」、「Honda 0 Saloon」そして「Acura RSX」のすべて。開発費用はもちろん、生産に使用予定だった設備・資産の除却損失や減損損失も一気に計上する見通しで、2026年3月期の連結業績における営業費用として8200億円~1兆1200億円という天文学的な数字が並ぶことになった。
さらに中国事業に関する投資の減損損失として1100億円~1500億円が加わり、個別業績でも3400億円~5700億円の特別損失を見込む。来期以降も追加的な費用・損失が発生する可能性があり、一連の損失の総額は最大で2兆5000億円にのぼると試算されている。
これに伴い通期連結業績予想も大幅修正。前回予想では5500億円の営業利益を見込んでいたが、今回の修正では一転して最大5700億円の営業損失に転落する見通しとなった。1株あたり利益も75円05銭の黒字予想から、最大で172円62銭の赤字へと逆転している。前期(2025年3月期)の営業利益が1兆2134億円だったことを思えば、わずか1年でいかに劇的な転落を遂げたかがわかる。

なぜホンダはここまで追い詰められたのか——「関税」「中国」「SDV」の三重苦
ホンダ自身が公式リリースで認めているように、今回の事態は複数の要因が絡み合った結果だ。
まず直撃したのが、米国の関税政策の変更である。ICE(内燃機関)車やハイブリッド車の収益に直接ダメージを与え、ホンダの四輪事業の屋台骨を揺るがした。もともとホンダはEV開発へのリソースシフト、2040年にはガソリンエンジン製造からの撤退を進めていたが、その結果として既存のICE・ハイブリッド車の商品力が手薄になり、アジア市場での競争力低下も招いていた。
次に、中国・アジア市場における競争環境の激変がある。BYDをはじめとする新興EVメーカーは、短期間での車両開発スピードと、ADAS(先進運転支援システム)を核としたSDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)領域での圧倒的な強みを武器に急速に台頭。官民一体となった急速かつ大規模な普及で、日本の多くのメーカーともどもグローバル戦略の根本的な見直しを迫られるほどになっている。
ホンダはその(戦略見直しを迫られる)中心的存在で、かつて「燃費がいい・壊れない・コスパが高い」という軸で絶大な支持を誇ったホンダ車が、ソフトウェアの進化スピードでは太刀打ちできなくなりつつある。ホンダ自身も「バリューフォーマネーのある商品を提供できなかった」と率直に認めている。
そして三つ目が、米国でのEV市場そのものの拡大鈍化だ。トランプ政権下での化石燃料規制の緩和やEV補助金の見直しにより、市場の成長スピードが当初予測を大きく下回っている。「EVシフト」を旗印に巨額の開発投資を続けてきたホンダにとって、これは根本的な戦略の前提が崩れたことを意味する。
こうした三重苦の中で、「EV需要が大幅に減少している現在の事業環境下で生産・販売を開始すると、将来にわたってさらなる損失拡大を招く恐れがある」と判断し、今回の中止決断に至ったというわけだ。
本日の発表では、0シリーズについて「開発・生産中止」とだけしか明記されておらず、再開の可能性については触れられていない。事実上の開発凍結……と考えられる。
「やっぱりか」——それでもホンダが選んだ道、次の手は「ハイブリッド強化」
ネット上では今回の発表を受けて「やっぱりそうなったか」という声と、「2兆5000億円って……どうすんだこれ」という声が入り混じっている。EVシフトへの過剰投資リスクを指摘する声はかねてからあっただけに、「予想通り」と受け止めるユーザーも少なくない。一方で、あれだけ大々的に発表したHonda 0シリーズの中止は、ブランドイメージへの打撃という意味でも無視できない痛手だ。
ではホンダはこれからどこへ向かうのか。
今回のリリースでホンダが明確に打ち出したのは、ハイブリッド車の強化だ。EV市場の拡大鈍化を踏まえてリソース配分を見直し、次世代ハイブリッド車のラインアップを拡充していく方針を示した。注力市場としては日本・米国に加え、急成長が見込まれるインドを重点市場として位置づけ、モデルラインアップの拡充とコスト競争力の強化を図るという。
ホンダはハイブリッド技術では長年の蓄積がある。1999年にインサイトで世界に先駆けてハイブリッド車を市場投入して以来、独自のe:HEVシステムを磨き続けてきた。この「本来の強み」に立ち返るという方向性は、ある意味では理にかなっている。
EVへの取り組みをゼロにするわけではなく、「収益性や需要動向とのバランスを見ながら、長期的な視点で柔軟に行っていく」としているが、当面の優先順位がハイブリッドにあることは明らかだ。また、四輪事業が苦境に立たされる中でも、二輪事業と金融サービス事業の収益力を軸に安定した株主還元を継続するとしており、配当予想については今回の業績修正にもかかわらず変更しないと発表している。
なお、今回の責任を取る形で、代表執行役社長・副社長は月度報酬の30%を3か月間自主返上し、STI(短期インセンティブ)も不支給とする。年間報酬としては基準額の25〜30%減となる。
四輪事業の中長期戦略の詳細については、2026年5月に改めて発表会見が予定されている。Honda 0シリーズという看板を下ろしたホンダが、次にどんな絵を描くのか——その全貌が明らかになるのはもう少し先になりそうだ。ただ確かなのは、ホンダが今、創業以来でも類を見ない規模の戦略転換の真っ只中にいるということだ。
こういう時こそ自動車情報専門メディアとしては応援したい。ホンダがんばれ。こういう大胆な方針転換が出来るのはホンダの強みだ。生半可な企業だったらこんな方針転換はそうそうできない。失敗は挑戦の証でもある。これから魅力的なハイブリッド車をガンガン出して、資金的余裕をたっぷり作って、改めて「ホンダが考える魅力的なBEV」に再挑戦してもらいたい。
(※2026年3月12日 16:30~の記者会見を受けての追記)ホンダ三部敏宏社長による緊急記者会見が開かれ、記者からの質問に答えた。「ホンダ0シリーズ全体の開発・生産を中止するということか?」、「2025年秋のジャパンモビリティショーで発表された【Honda 0 α】も開発中止か?」との質問に、三部社長は「今回発表したのはあくまで北米向けBEVの開発・生産中止。Honda 0 αはインドや日本向けに開発を進めており、市場も事情も異なっていて、別の話。αについてはいまのところ予定どおり進めている」と話した。マジですか! 一部繰り返しになるが、Honda 0シリーズは、シリーズ全体の開発が凍結されたわけではなく、「α」は引き続き2027年投入予定で開発が進んでいるとのこと。だ……大丈夫……なのか??
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