モーターの電源に交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:(ホンダモバイルパワーパックイー)」を採用した、ヤマハの原付一種クラス電動スクーター「JOG E」が2025年12月に登場。市街地を実走して、その走りと使い勝手をチェックしてみた。
交換式バッテリーをシェアして走る電動スクーター
EVは自宅や充電スタンドなどでバッテリー充電を行なうのが一般的だろう。急速充電器の普及もあって充電時間は短くなっているが、それでもガソリン給油ほどの短時間では済まない。そうした時間を短縮する方法のひとつが、交換式バッテリーだ。
そして、その交換式バッテリーの電動バイク用規格を統一することで、街中のステーションでのバッテリー交換を可能にし、内燃機関のバイクのような利便性を提供して電動バイクの普及をめざす企業「Gachaco(ガチャコ)」が設立された。「Gachaco」はホンダ、カワサキ、スズキ、ヤマハとエネオスが出資して設立した企業で、交換式バッテリーはホンダが開発した「Honda Mobile Power Pack e:」を使用する。バッテリー交換を行なえる「Gachacoステーション」は2026年3月現在、東京都42カ所、埼玉県2カ所、大阪府7カ所に設置されていることもあり、「JOG E」は東京と大阪の地域限定で先行発売されることになった。
ヤマハは2002年に量産初の電動二輪車「パッソル」を国内限定発売し、早い時期から電動モビリティと関わってきた。そうした中で、ヤマハは工場や事業所だけではなく、ヤマハ製品の使用時や原材料調達まで含めたカーボンニュートラル自体の削減方法のひとつとして、原付一種クラスへの電動スクーターの導入を決定。その国内モデルが「JOG E」だ。
JOG Eの足着き性をチェック
軽快なコミューターとして気軽に乗れる
「JOG E」は車重93kgでセンタースタンドのみの装備。内燃機関の原付一種スクーターよりは重いので、取りまわしも重いだろうと予想していた。しかし、センタースタンドを外す時もかける時も重さを感じることなくスムーズに操作でき、車体を押し引きした時も重さは感じなかった。シート下に搭載された「Honda Mobile Power Pack e:」の重量は10kgで、動力源のモーターはリヤホイール内に配置するなど、重量物の車体レイアウトとセンタースタンド位置のバランスがコミューターとしての良好な取りまわし性を実現しているのだろう。
モーター起動はメインキーをONにし、ブレーキレバーを握りながらスタートボタンを押す。メーター内の「READY」が点灯すれば、スロットルを開けると走り出せる。インホイールモーターは最高出力2.3PS/540rpmと原付一種スクータークラスでは抑えられた数値となっているが、内燃機関よりも低回転で発生する。そして最大トルクは9.2kgf・m/25rpmと軽自動車並み、かつ極低回転で発揮する。
モーターの出力特性はハンドル右側のスイッチで「STD」と「ECON」に切り替えられる。まずは「STD」にセットして走行してみた。スロットルを全閉状態から少し開けると、一瞬のタイムラグがあってから車体は振動も大きな音も発せずにスルスルと動き出す。最大トルク発生回転域は低いものの、ドンと飛び出すような加速力は発揮されず、かと言ってトルクの細さもなく、スムーズにスピードを上げていく。さらにスロットルを開けていくと、内燃機関のようなトルクの盛り上がり感はないが、まさにモーターらしい加速度でストレスなく30km/hに到達する。特筆すべき速さは感じなかったが、上り坂でも失速せず、原付一種クラスのスクーターとして動力性能に不満は感じなかった。
フロント12インチホイールのハンドリングは違和感のない操作性で、リヤ10インチのインホイールモーターは低重心化にも貢献していて、車体の安定性と旋回性のバランスも良好。前後サスペンションは衝撃をよく吸収し、スムーズな乗り心地となっている。ブレーキはリヤブレーキをかけるとフロントブレーキも連動する「コンビブレーキ」を採用。フロントはディスクブレーキで制動力をコントロールしやすいのも好印象だった。
次に「ECON」にセットしてみた。スロットルを開けて一瞬のタイムラグ後に発進するのは変わらないが、そこからさらにスロットルを開けてもモーターのレスポンスはかなりマイルドになっている。20km/hまではすぐに加速するが、30km/hにはなかなか到達しない。制限速度オーバーにならないメリットはあるが、スロットル操作と予想していたマシン挙動のギャップが大きく、慣れが必要だと思ったのが正直なところだ。
航続距離とステーションの増加に期待
「STD」の加速は充分スムーズで、実用的な速度で走行できる。振動もなく、大きな走行音も発しない乗り味は電動バイクならではの特徴で、ペダルを漕がなくてもいい分、電動アシスト自転車よりも楽に移動できる。30km/hの制限速度、二段階右折といった規制はあるものの、「JOG E」は特別な操作が不要で、乗りやすいコミューターに仕上がっていると言える。充電ステーションでバッテリー充電するのではなく、「Gachacoステーション」でバッテリーを交換し、30秒程度で再び走り出せるシステムも個人的には好みで、バッテリー交換式なら電動スクーターも選択肢になると思えた。
ただ、気になったのが航続距離。バッテリー充電100%から試乗を開始し、そこからバッテリー残量80%まではゆっくりと減っていったが、60%付近になると残量の減りかたが急になったように感じられたからだ。諸元表での1充電走行距離は53kmとなっているが、今回は30kmに届くかどうかという結果(残量15%での計測値)で、初試乗ということもあり減少具合を頻繁にチェックしながら走行し、少しひやひやした気持ちにもなった。
「Gachacoステーション」は東京都内に42カ所設置されているが、ガソリンスタンドで給油できるような手軽さは現状実現されているとは言い難い。充電待ちがなくガソリン給油よりも素早くバッテリー交換できるメリットを生かすために、「Gachacoステーション」の早期の普及に期待したい。
現在「JOG E」は車両のみの販売となっていて、バッテリーと充電器のセット販売は2026年後半に開始予定とのこと。実際に走行するためには「Gachaco」とバッテリーシェアリングサービスを契約し、「Gachacoステーション」を利用することになる。「JOG E」で月300km走行する場合でシミュレーションすると、バッテリー利用料2530円、ステーション利用料金700円、計3230円になるとのこと。走行状況によってステーション利用回数も変わり、それに合わせて利用料金も変わるのであくまで目安となるが、125ccエンジンを搭載した新基準原付で同距離を走行する場合より、ランニングコストはかかると予想される。ただし、新基準原付「JOG ONE」の車両価格25万9600円に対し、「JOG E」の車両価格は15万9500円。さらに利用条件を満たして「クリーンエネルギー自動車導入事業費補助金」の審査をクリアすれば、2万3000円が交付される。こうした価格差も「JOG E」を選ぶメリットと言えるだろう。
ヤマハJOG E主要諸元
・全長×全高×全幅:1795×680×1140mm
・ホイールベース:1300mm
・車重:93kg
・原動機種類:交流同期電動機
・最高出力:2.3PS/540rpm
・最大トルク:9.2kgf・m/25rpm
・定格出力:0.58kW
・ブレーキ:F=シングルディスク、R=ドラム
・タイヤ:F=90/90-12、R=100/90-10
・価格:15万9500円
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/524830/
30秒でバッテリー交換、すぐに走り出せる電動スクーター「JOG E」【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery3/524830/524876/





















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