フェラーリ新型クーペ日本発売 その名も「ローマ」!! 実力はいかに?

フェラーリ新型クーペ日本発売 その名も「ローマ」!! 実力はいかに?

 フェラーリジャパンは2020年4月1日、新型クーペ「Roma(ローマ)」を日本にて初披露した。価格は2682万円。すでに受注が開始されており、納車は2021年初頭を予定している。

 フェラーリスタイリングセンターが手掛けた個性的なエクステリアは、1950〜1960年代のイタリア・ローマで見られたラ・ドルチェ・ヴィータ(イタリア語で甘い生活)の世界観を現代流に解釈し直したもので、エレガントかつタイムレスなデザインに仕上げたという。

 また、フェラーリ歴代の2+2の4シータークーペのなかで、最もパワフルなモデルでありながら、運転のしやすさなど日常性を兼ね備えているモデルであるという。

 発表会場で登壇したフェラーリジャパン代表取締役社長フェデリコ・パストレッリ氏は、ローマのコンセプトについて「イブニングドレスに身を包んだF1マシン」とコメント。

 最近のフェラーリにしては珍しい、エレガントなスタイリングを身に纏った新型ローマ。スーパーカー評論家の西川 淳氏は新型ローマをどう評価するのか?

文/西川 淳
写真/Ferrari S.p.A. フェラーリジャパン

【画像ギャラリー】思わず見とれてしまう新型フェラーリローマのエレガントなデザイン


コンセプトは「ラ・ヌォーヴァ・ドルチェ・ヴィータ」(イタリア語で新・甘い生活)

フェラーリスタイルセンターが手掛けたエレガントなスタイリングが特徴の新型ローマ。価格は2682万円
フェラーリスタイルセンターが手掛けたエレガントなスタイリングが特徴の新型ローマ。価格は2682万円
新型ローマのオフィシャル動画はローマを舞台に男女のカップルがそれぞれローマをドライビングしながらデートするという展開。まさに甘い生活だ
新型ローマのオフィシャル動画はローマを舞台に男女のカップルがそれぞれローマをドライビングしながらデートするという展開。まさに甘い生活だ

 「最近のフェラーリのデザインってラインがちょっと複雑過ぎるよね」、「空力が良くなっているのは分かるんだけど、美しくない気がするよ」。

 ここ数年来、フェラーリマニア(実際に買う人も熱狂的なファンの人もいずれも含む)の間でよく交わされた会話の典型だ。

 筆者もまた21世紀に入ってからのフェラーリからは“艶美”がなくなったと思う一人だった。

 エアロダイナミクスに支配されたデザインのエクステリアはもとより、機能性重視=ドライバーオリエンテッドな風景のインテリアはドライビング派の好みではあってもどこか落ち着きに欠けている。まさに跳ね嘶く馬の如く、だ。

 昨今の空力オバケというべきグロテスクなF1マシンを見れば分かるように、それは速く走るための代償でしかない。

 けれども果たしてロードカーにそこまでの犠牲が必要だったのか。パワー競争と同様、立ち止まって考える時期がやって来るのではないか。

独特の表情をみせる新型ローマのフロントマスク
独特の表情をみせる新型ローマのフロントマスク

 ユーザーが望むからそれらを推し進めている(=マーケットイン)というのであれば、もはやプロダクトアウトで時計の針を戻せるブランドはスポーツカー&スーパーカーの最高峰に君臨するフェラーリのほかにない。マラネッロ(フェラーリ本社)の言うことなら世界中の誰もが耳を傾けそうである。

 シンプル・イズ・ビューティフルなスタイルの新型GT、ローマの登場でマラネッロはその片方(相変わらずパワー競争は続いている)をまずは実現してみせたのだと思う。

 思い返せばフェラーリほどスポーツカーとGTカーを峻別して成功したブランドは他になかった。

 黎明期におけるマラネッロ発ロードカーはたいていスポーツカー=(サンデー)レーシングカーだったが、純然たるロードカービジネスがアメリカで成立するとみるや1950年代半ばから試験的に製造を始め、1960年代に入っていっきに本格化させている。

 一部のスペシャルモデルを除いた20世紀の跳ね馬ロードカーはだから美しかったのだ。250GTルッソ然り、ディーノ然り、ベルリネッタボクサー然り。

 美しい跳ね馬よ、もう一度。オーナーたちの間でもそんな声が増えていることをマラネッロが見過ごすはずはない。プロダクトアウトが得意なブランドほどマーケットを熟知しているもの。

 マラネッロほどロイヤルカスタマーとのダイレクトな関係を重要視するブランドもまた他になかった。

 先駆となったのはイコナ(ICONA)シリーズである。ブランド第三の柱として発表された限定モデルシリーズで、まずはモンツァSP1&SP2という812スーパーファストベースの限定オープンモデルが2018年秋に投入された。そのスタイルが既にシンプル・イズ・ビューティそのものだったのだ。

リア回りのデザインもエレガントで、躍動感溢れるリアフェンダーが美しい
リア回りのデザインもエレガントで、躍動感溢れるリアフェンダーが美しい

 そして2019年11月、突如として首都ローマに現れたのがフェラーリ・ローマである。

 フェデリコ・フェリーニ監督の代表作「甘い生活」(1950年代後半の首都ローマを舞台としたセレブリティたちのデカダンな生活を描写した)に倣って「新・甘い生活」(ラ・ヌォーヴァ・ドルチェ・ヴィータ)をキーコンセプトに掲げた。

 首脳陣や開発者から直接聞いた話をもとに筆者なりにその意をひも解けば、「ひけらかさないラグジュアリーで自己をまずは満足させるようなシアワセを得るクルマ」、となるだろうか。

 要するに「オラオラ、どけどけ、フェラーリ様のお通りだ!」といった自己顕示欲の強過ぎる輩にはもう乗ってもらいたくない、もしくはそういう人たちとは一線を画したい真のフェラーリ好きのための跳ね馬、というわけである。

 そのことはこの2020年4月に日本初上陸を果たした個体を見てもよく分かる。まずは色がなんとも渋いブルーローマ(テーマカラー)だった。

 そして、ほぼすべてのカスタマーがオプションで選ぶため、今やほとんどスタンダードのようになったフロントフェンダーのSFシールド(埋め込み型のエンブレム)が見当たらなかった。

日本でお披露目されたのは“BLUE ROMA”という深い青
日本でお披露目されたのは“BLUE ROMA”という深い青

 もちろんオプションメニューには設定されてはいるけれども、あえて選ばなかったのだ。おそらくその方が無粋なキャラクターラインなど存在しないサイドシルエットの美しさを際立たせるからであろう。

 イタリア本国での発表時もブルーグレーやシルバー、ホワイトの個体が飾られており、SFシールドを貼っていたのはシルバーだけだった(ただし、オーナー向けには赤い個体も披露されている)。

 そういえばローマでの発表会にはSF=スクーデリア・フェラーリ、つまりはF1を頂点とするモータースポーツ活動の匂いがまるでなかった。

 スクーデリア感はもちろんのこと、明るい赤さえ排されていた(会場はダークレッドな雰囲気だった)。これもまた珍しいことである。

 そもそも1960年代の跳ね馬ロードカーに真っ赤なボディカラーを使うことさえ稀だった。

 シルバーやネイビー、グリーン、シャンパンといった地味な色が好まれた。赤がブームになり始めたのは1980年代になってからのことで、SFシールドに至ってはF40(これまた半分レースカーみたいなものだったが)に採用されたことで広まった1990年代以降の流行りでしかない。

 そう、ローマの醸し出す雰囲気はそのボディカラーを含めフェラーリロードカーの本来の伝統に回帰したものだと言っていい。

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