三菱i スモール軽の革命児 が辿った悲運とは 【偉大な生産終了車】

三菱i スモール軽の革命児 が辿った悲運とは 【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回は三菱i(アイ/2006-2013)をご紹介します。

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文:伊達軍曹/写真:MITSUBISHI


■リアミッドシップレイアウトが生み出した「革新的」スモール軽

「軽自動車の新時代を切り拓く革新的なプレミアムスモール」とのコンセプトで、経営再建中だった三菱自動車が2006年に発売したリア・ミッドシップレイアウトの軽自動車。

 技術面では確かに「革新的」だったのだが、マーケットの潜在ニーズとまったく折り合わず、2013年に1代限りで生産終了となった悲運の意欲作。それが、三菱i(アイ)です。

 居住性と衝突安全性、そして斬新なデザインを統合したプレミアムスモールを目指したiの開発は2001年1月にスタートしました。

 その後、三菱自動車の経営難や、当時提携関係にあったダイムラー・クライスラーのスマートとバッティングしてしまうなどの理由から、その開発は一時ストップ。

 しかしダイムラー・クライスラーとの提携解消を機に再び開発は進み、iの市販バージョンは2006年1月、満を持してデビューを果たしたのです。

フロントビュー。エンジンのないフロントの空間はクラッシャブルゾーンとしても効率的に利用され安全性を高めるのに一役買っている

 iは、軽自動車としては異例なほどのコストをかけられた、高品質かつ斬新な一台でした。

 コストを考えれば、当時のeKワゴンの車台を流用するという選択肢もあったはずですが、iはまったく新しい、エンジンを後軸上に置く「リア・ミッドシップ」のプラットフォームを新規に採用。

 そして後軸上に45°傾けてマウントされたエンジンは、これまた新開発のMIVEC付き直3 DOHCインタークーラー付きターボでした。トランスミッションも、軽自動車では一般的なCVTではなく4速ATです。

 そしてリア・ミッドシップゆえにタイヤは四隅ギリギリに配置することができ、その結果、軽としては最長クラスの2550mmという超ロングホイールベースを実現。

 それに伴い、異例なまでに長大な車内空間を実現できたのもiの特徴です。

エンジンを後方に置くことで軽自動車屈指の長いホイールベース(前輪軸と後輪軸との距離)を実現。これがゆったりとしたスペース、そして大きな口径のタイヤとともに走りの安定性をも生み出した

 またエンジンや補機類がフロントにないことからデザインの自由度も増し、ご覧のとおりの愛らしくも斬新な、未来派フォルムを手に入れるに至りました。

 駆動方式は2WDと4WDの双方が用意され、リア・ミッドシップ車としての安定性と軽快なハンドリングを両立させる意味で、後輪には175/55R15の大径ワイドタイヤを採用。

 これら要素を総合した結果として三菱iの走りは、「軽快なれど粘り強い」といったニュアンスの、なかなか素晴らしい仕上がりになったのです。

 このように「作りは良かった」三菱iは、デビュー当初はまあまあ注目されたのですが、その後はさっぱり売れませんでした。

 そのため三菱自動車は、電気自動車の「アイミーブ」は引き続き製造しているものの、2013年6月にはiの生産を終了。そして同年9月には、三菱自動車の公式サイトからその姿を消しました。

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