スーパースポーツは、もはや一部の富裕層だけの世界なのか? そう思わせる現代にあって、シボレー コルベットは少し違う魅力を持っている。ミッドシップ化で大きく進化した走りと、アメリカンV8ならではの味わいから、手の届く憧れの実力をプロのドライバーが語る。
文:中谷明彦/写真:ベストカーWeb、シボレー
【画像ギャラリー】ポルシェやフェラーリでなくとも十分スーパーカーを楽しめるコルベット C8がコレ!(15枚)画像ギャラリー手の届く憧れのスーパースポーツがあるってマジ!?
「いつかはフェラーリを所有したい」「ポルシェ 911に乗ることが夢だった」。クルマ好きであれば、一度はそんな憧れを抱いたことがあるだろう。
かつてスーパースポーツカーといえば、フェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェが御三家として君臨し、その存在は多くの自動車ファンにとって特別なものだったに違いない。しかし近年は、マクラーレンやブガッティ、パガーニ、さらにはハイパーカーと呼ばれる数億円級のモデルまで登場し、その世界はさらに遠い存在となっている。
最高速度は400km/hに迫り、1000馬力を超えるモデルも珍しくない。カーボンモノコックにアクティブエアロ、ハイブリッドシステムまで備えた最新のハイパーカーは、性能だけを見ればレーシングカーを凌駕するものも存在する。だが、その価格は数千万円から億円単位。一般の自動車ファンにとって現実味のある選択肢とは言い難い。
では、本当に優れたスーパースポーツは高価でなければならないのだろうか。いや、必ずしもそうではない。その代表例がシボレー コルベットである。
ミッドシップに転換した米国を代表する名車
コルベットは1953年に誕生したアメリカを代表するスポーツカーであり、日本では「アメリカンマッスルカー」という印象が強い。しかし、その本質は単純な大排気量GTではない。むしろ、長年にわたり世界のスポーツカーと真っ向から戦い続けてきた、アメリカを代表する本格的なスーパースポーツなのである。
そのコルベットが大きな転換点を迎えたのが現行C8世代だった。歴代モデルが守り続けてきたフロントエンジン・リアドライブという伝統を捨て、ついにミッドシップレイアウトへと生まれ変わったのである。
その実車を初めて目にしたとき、スタイリングは確かにスーパーカーらしい迫力を備えていた。しかし細部を観察すると、フェラーリやランボルギーニのような工芸品にも似た精密さとは少し異なる印象を受けた。
アルミダイキャストやカーボンパーツは必要部位に留められ、内装の質感にも過度な演出はない。率直に言えば、価格相応の合理的な作りである。しかし、この第一印象はステアリングを握った瞬間に覆された。
伝統の方式がもたらす圧倒的な利点
まず驚かされたのがエンジンだ。登場時C8コルベットが搭載した6.2リッターV型8気筒自然吸気エンジンは現代では珍しいOHV、すなわちオーバーヘッドバルブ方式を採用している。現在の高性能車の多くはDOHCエンジンである。
DOHCとはダブルオーバーヘッドカムシャフトの略称で、吸気側と排気側にそれぞれカムシャフトをシリンダーヘッドに配置する方式だ。V型8気筒では左右バンクそれぞれに吸排気用カムシャフトを持つため、合計4本ものカムシャフトを必要とする。
一方、OHVはシリンダーブロック下部内に一本のカムシャフトを配置し、プッシュロッドとロッカーアームを介してバルブを作動させる。構造そのものは古典的である。しかし、この方式には現代でも見逃せない利点がある。
まず部品点数が少ない。シリンダーヘッドを小型化できるため、エンジン全高を低く抑えられる。さらにV型8気筒ではバンク中央に一本のカムシャフトを配置できるため、エンジン全体が非常にコンパクトになり低重心化にも有利なのである。
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