4月にトヨタはJPNタクシーベース、ホンダはステップワゴンとオデッセイをベースにした軽症のコロナウィルス感染者を搬送する車両を開発し、自治台への提供を開始。
さらに、ホンダは日本に続き、米国でも5月初めから北米で販売されるオデッセイをベースにした同様の車両の提供を行っている。
オデッセイは、1994年の登場時に「ホンダを救った救世主」と呼ばれるほどの大ヒット車なった初代モデルから、形を変えながら全盛期ほどではないにせよ現在もそれなりに売れているラージミニバンである。
しかし、北米にはこの日本仕様とはまったく別の「オデッセイ」が存在。本稿では、新型コロナウィルス感染者の搬送車としても話題になることが増えた同車を紹介したい。
文:永田恵一
写真:HONDA
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日本にないオデッセイの成り立ちは?
初代オデッセイは1990年代初めにすでにアメリカで定番商品となっていたミニバン市場にホンダが参入するモデルとして計画されたモデルだった。
しかし米国市場をターゲットにしたミニバンの開発は諸事情で頓挫し、ボディサイズを日本向けとし、ドアはヒンジドアとしたミニバンが初代オデッセイ(日本仕様)として投入された。
初代オデッセイは日本で大ヒット車となり北米にも投入されたのだが、米国では「ボディサイズが小さく、米国でのミニバン使用にはキャビンが狭い、2.2L、2.3Lの4気筒エンジンでは動力性能に余裕がない」といった理由で販売は振るわなかった。
こうした経緯もあり、1998年に初代モデルが登場したのが北米オデッセイである。北米オデッセイは、1999年から日本でも「ラグレイト」の車名で販売。
現地生産となる日本流の表現では全長5m超×全幅1.9m超えというフルサイズミニバンで、このコンセプトと3.5L・V6エンジンを搭載する点は5代目となる現行モデルまで不変だ。
ラグレイトは、フルサイズらしい余裕あるキャビンや動力性能は魅力だったのだが、やはりボディサイズが日本には使うには大きすぎため販売は低調で、2005年で残念ながら日本での販売は終了となった。
ラグレイト絶版後も進化した北米オデッセイは5代目に!
2017年のデトロイトモーターショーで登場した北米オデッセイの現行モデルも、ボディサイズ(全長5080mm×全幅1960mm×全高1710mm)やスライドドアとなる点など、初代モデルからコンセプトはそれほど変わっていない。
特徴的なところをキャビンから見ていくと、シート配列は2-2-3の2列目シートが独立したキャプテンシートとなる7人乗りと2-3-3の8人乗りの2つだ。
8人乗りは日産セレナのように2列目左右席と中央席が稼働することでキャプテンシートのようにも使え、3列目シートへのアクセスも便利なマジックスライドシートとなることもあり、7人乗りとなるのはベーシックグレードのみとなる。
また、キャビンが広大なだけに1~2列目以降の乗員の様子をカメラが捉えた映像で監視できるキャビンウォッチ、ヘッドホンかリアスピーカーを経由して会話できるキャビントーク、ラゲッジスペースに付く掃除機でキャビンの清掃ができる点など、日本人には珍しい面白い機能も揃う。
クルマの土台となるプラットホームは、新開発のものとなり、パワートレーンは低負荷時の気筒休止機能を持つ直噴の3.5L・V6(280馬力)+10速ATのみで、駆動方式はFFのみ。
ラグレイトは、新開発のプラットホームのおかげもあり、車重が約2トンとボディサイズを考えれば軽量なため、迫力ある豪快な加速感を味わえそうだ。
なお、価格は約3万1000ドル(日本円で約340万円)から4万7000ドル(520万円)となる。
オーソドックスながら堅実な仕上がりとなっている北米オデッセイだが、ライバルとなるトヨタ シエナが最近フルモデルチェンジされ、パワートレーンを2.5Lハイブリッド(システム出力243馬力で後輪はモーター駆動の4WD)のみとした点は脅威だ。
なぜかといえば絶対的な動力性能では北米オデッセイの方が上としても、燃費がアメリカの混合モードで北米オデッセイの8.8km/Lに対し、次期シエナは13.2km/Lと1.5倍なのだ。
次期シエナの燃費がこれだけ良くて充分な動力性能を備え、価格(未発表)がもし北米オデッセイと同等だったとすると、北米にも日本のオデッセイに搭載される2L2モーターハイブリッドを強化するなどして搭載する必要性は非常に大きいと思う。
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