2024年6月発売のバスマガジンで、広島市における「みどり坂タウンバス」デビューのニュースを紹介した。
そこでは中型のオノエンスターEV8台が華々しく並び、これまでのモノレール形式だったスカイレールから、さらに未来のビジョンを感じさせてもらった。
空中に延びるレール式の交通から縦横無尽に街を走る電気バスへと変わった街で、電気バスは一体どのように受け止められているか、2年経ったいま、それを見せてもらいに出かけた。
(記事の内容は、2026年3月現在のものです)
執筆/加藤佳一 写真/バスマガジン編集部(特記を除く)
取材協力/スカイレールサービス株式会社、芸陽バス株式会社、ONO ENGINEERING
※2026年3月発売《バスマガジンvol.132》『バス作りの新勢力から』より
■2年間で地域に馴染んだEV ニーズに応えてダイヤを改正

JR山陽本線の瀬野駅前に残るスカイレールみどり口駅。だが、急斜面のレールを行き交うゴンドラの姿はもうない。一方、駅前ロータリーのバス停には、数人の乗客たち。そこへ鮮やかなスカイブルーのオノエンスターEVが滑り込む姿が、すでに「みどり坂」の新たな日常になっているようだ。
「時間が経つごとに、お客様も私たち運行する側もバスというものに馴染んできたと思います」と語るのは、スカイレールサービスの村松明彦社長。
当初はバス特有の多客時や悪天候時の遅れに戸惑いを見せた乗客だが、次第にそれを見越して利用するようになった。また朝の通勤時間帯、JR線への接続が良い便に乗客が集中するなど乗車率にバラツキが出たため、開業半年後の2024年10月27日に早くもダイヤ改正を実施。
乗車率が低い便を廃止し、高い便にはみどり中央でなく団地の奥を始発にした続行便を付け、積み残しの防止と乗車率の平準化を図った。
さらに中学校の下校時間帯、授業カリキュラムにより各便の乗客数がまったく異なるため、こちらも実態に合わせたダイヤに調整。13~15時台を毎時3便にしたうえで、終業時刻や部活の有無に合わせ、続行便や臨時便が出せる臨機応変な態勢をとるよう変更した。
とはいえ無人のゴンドラを増発できるスカイレールと異なり、バス1台の増発には1人の運転士が必要だ。そこでニーズに合わせた下校ダイヤへの対応について、運行を受託している芸陽バス広島営業所の坂井健一所長に尋ねると、「学校から予めカリキュラムをいただいて、運行計画を立てています」とのこと。
さらに当日の急な変更にも、空いている運転士を活用して極力対応しているという。ちなみに、高台の住宅地からふもとの学校への通学という特性上、中学生の多くが片道定期券「みどり坂おかえりパス」を使用し、下校時だけバスに乗車するそうだ。
■登坂力と車内の広さに高評価! 非常時の電源供給機能もPR
「みどり坂タウンバス」には、芸陽バスが開業前に社内で募集した運転士と、グループの広島電鉄からの応援の運転士が専属で乗務。担当車制ではないが、8台のオノエンスターEVには個体差がほとんどなく、運転士の評価は高い。
「ディーゼル車より静か、なおかつパワフルで、急勾配でもぐいぐい上っていきます」と坂井所長。
また、ATが標準となったディーゼル車に比べ、出足、加速の良さも魅力だという。さらに現在の国産車にない大型幅9m車というサイズは、ベビーカーや車椅子を乗せたときに、中型車と比べた車内の広さを実感するそうだ。
こうした状況から、欠員が出て社内で新たに募集すると、何人もの手が上がる。広島電鉄からの応援要員も、順番待ちになっているそうだ。
定期整備は金庫精算とともにダイヤに組み込まれ、広島営業所本所の工場で行っている。EVは初体験という整備士だけに、当初は対応に苦慮する場面もあったが、スカイレールサービスやオノエンスターと連携をとりながら、ようやく慣れてきたところだという。
一方、小学校の防災訓練にEVバスを持ち込むなど、非常時には電源供給に活用できるというEVの特性のPRも積極的に行っている。
団地内に生命維持装置を必要とする障がい者が居住することをきっかけとして、“災害時におけるEVバスによる電源供給等に関する協定”を、広島市、地元町内会、スカイレールサービス、芸陽バスの4社によって締結した。
「いま計画があるわけではありませんが、CO2削減効果など考えると、将来的に街なかではEVバスが広まっていくんじゃないかと思います」と坂井所長は分析した。
