雨の日のカーブや高速道路の水たまりで、突然タイヤがズルッと滑ったらどうする? 慌ててブレーキを踏む? ハンドルを切る? 実は操作を間違えると、かえってスリップが悪化することもある。前輪が滑った時と後輪が滑った時では対処法も異なる。いざという時に慌てないために、アクセル、ブレーキ、ハンドルの正しい操作方法と、スリップを防ぐ運転のコツを解説しよう。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、Adobe Stock(トップ画像:WORLD PRODUCE@Adobe Stock)
うわっ、滑った! その瞬間にやってはいけない操作とは?
雨の日にカーブを曲がっていたら、突然タイヤがズルッと滑ってクルマが外側へ膨らんでしまった。あるいは高速道路で水たまりを通過した瞬間、ハンドルの手応えがなくなり、クルマがフワッと浮いたような感覚に襲われた……。
こんな経験をしたことがあるドライバーもいるのではないだろうか。
突然リアタイヤが滑ってクルマのお尻が横に流れ始めたら、ベテランドライバーでも冷や汗ものだ。そんな時、反射的にハンドルを大きく切ったり、ブレーキを思い切り踏んだりしてしまいがちだが、ちょっと待ってほしい。
スリップした瞬間に最も避けたいのは、慌てて急激な操作を繰り返すことである。そもそもクルマが曲がったり、加速したり、止まったりできるのは、タイヤと路面の間に摩擦力、いわゆるグリップ力が働いているからだ。
ところが雨や雪、凍結などで路面が滑りやすくなると、このグリップ力が低下する。そこに急ハンドルや急ブレーキ、急加速などの操作が加わると、タイヤが路面を捉えきれなくなってしまう。
タイヤが滑っているということは、すでにグリップ力の限界を超えている可能性がある。そこでさらに大きな駆動力を加えれば、スリップを悪化させるおそれがあるのだ。
では、実際に滑ってしまったらどうするべきなのか?
基本は、慌てずにアクセル操作を穏やかにし、進みたい方向を見ながら、ハンドルを急激に動かさないことだ。
ただし、ひと口にスリップといっても、前輪が滑る場合と後輪が滑る場合、さらに水たまりでタイヤが浮いてしまう場合では対処法が異なる。
また、急ブレーキを避けるというのは、あくまでも不用意な操作をしないという意味である。衝突を避けるために緊急停止が必要な場合は、ABS装着車ならブレーキを強く踏み続けることが基本だ。
スリップした時にどう操作するのか? 具体的に見ていこう。
前輪が滑ったらハンドルを戻す? 後輪が滑ったら逆に切る? 正しい対処法
クルマのスリップには、大きく分けてアンダーステアとオーバーステアという2つの挙動がある。
アンダーステアとは、ハンドルを切っているのに思ったほどクルマが曲がらず、カーブの外側へ膨らんでしまう状態だ。
例えば雨の日の交差点で左折しようとした時、ハンドルを切っているのにクルマが直進しようとする。これは前輪のグリップ力が不足している状態である。
こんな時にやってしまいがちなのが、曲がらないからといって、さらにハンドルを切り足すことだ。しかし、前輪がすでに滑っているのに舵角を増やしても、思いどおりに曲がれるとは限らない。
対処法は、まずアクセルを穏やかに戻して加速をやめること。そしてハンドルをそれ以上切り足さず、必要なら少し戻して前輪のグリップ回復を促すことだ。
速度が落ちてタイヤが再び路面を捉え始めたら、進みたい方向へ適切にハンドルを向ける。
前輪が滑った時の操作を整理すると、以下のようになる。
・アクセル:穏やかに戻して加速をやめる
・ブレーキ:減速が必要なら適切に踏む。緊急停止が必要な場合は、ABS装着車なら強く踏み続ける
・ハンドル:さらに切り足さない。必要なら少し戻し、グリップが回復したら進みたい方向へ修正する
つまり、曲がらないからといって、さらにハンドルを切るのは逆効果になることがあるのだ。
一方、後輪が滑った場合はどうだろうか?
後輪のグリップ力が失われ、クルマの後部がカーブの外側へ流れ出す状態をオーバーステアという。
例えば左カーブでリアタイヤが右側に滑り出すと、クルマは左へ向きを変えすぎるような挙動を示す。
この場合、車体が回転しすぎるのを抑えるため、滑りの程度に応じてハンドルを右方向へ修正する必要がある。いわゆるカウンターステアだ。
反対に右カーブでリアが左へ流れたら、ハンドルを左方向へ修正する。
後輪が滑った時の操作は以下のとおりだ。
・アクセル:不用意に踏み込まない。急激なアクセルオフも避け、穏やかに操作する
・ブレーキ:急な踏み込みで姿勢を乱さないよう注意する。ただし緊急停止が必要ならABSを活用して強く踏む
・ハンドル:クルマの回転を抑える方向へ必要な量だけ修正し、姿勢が戻り始めたら切りすぎないよう戻す
ただし、カウンターステアは大きく切ればいいというものではない。後輪のグリップが回復した際にハンドルを戻すタイミングが遅れると、今度は反対方向へクルマが大きく振られることがある。
とくに一般ドライバーが公道で突然オーバーステアに陥った場合、正確なカウンターステアを行うのは簡単ではない。
また、現在の多くのクルマにはESC(横滑り防止装置)が装備されている。
トヨタではVSC、ホンダではVSAなどと呼ばれる装置で、クルマがドライバーの意図した方向から外れそうになると、エンジン出力や各車輪のブレーキ力を制御して車両姿勢を安定させようとする。
一般ドライバーは無理にドリフト走行のような操作をしようとせず、進みたい方向を見ながら適切にハンドルを操作し、電子制御の働きを妨げるような過大な操作を避けることが重要だ。
もちろん、ESCが付いているから絶対にスピンしないというわけではない。タイヤのグリップ力そのものを増やす魔法の装置ではないからだ。


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