水たまりでハンドルが効かない! ハイドロプレーニング現象が起きたらどうする?
雨の日の高速道路で、とくに恐ろしいのがハイドロプレーニング現象である。これはタイヤと路面の間に水の膜ができ、タイヤが路面から浮き上がったような状態になる現象だ。
通常、タイヤの溝は路面の水を排出する役割を担っている。しかし、走行速度が高かったり、タイヤの溝が減っていたり、水たまりが深かったりすると、排水が追いつかなくなることがある。
そうなるとタイヤは路面との接触を失い、ハンドル操作やブレーキ操作が効きにくくなる。まるで氷の上を滑っているような状態である。
では、ハイドロプレーニング現象が起きたらどうすればいいのか?
基本は、アクセルを穏やかに戻し、ハンドルを大きく動かさず、タイヤが再び路面を捉えるのを待つことである。
操作を整理すると次のようになる。
・アクセル:穏やかに戻して加速をやめる
・ブレーキ:緊急減速が不要なら急激なブレーキ操作を避ける。緊急停止が必要なら強く踏む
・ハンドル:進みたい方向を保ち、大きく切り足さない
・グリップ回復後:クルマの向きを確認し、必要な修正操作を穏やかに行う
タイヤが水膜に乗っている間は、いくらハンドルを切っても十分な旋回力が発生しない。だからといって、さらにハンドルを切り足すのは危険である。
タイヤが再び路面に接地した瞬間、大きく切られた前輪によってクルマが急激に向きを変える可能性があるからだ。
また、ハイドロプレーニング中に強くブレーキを踏んでも、タイヤが路面を捉えていなければ十分な制動力は得られない。
ただし、前方に停止車両があるなど、衝突を避けるために緊急ブレーキが必要な場合は別だ。ABS装着車ならブレーキを強く踏み続け、必要な回避操作を行うことが基本となる。
ABSが作動するとブレーキペダルに振動が伝わることがあるが、これは正常な作動によるものだ。驚いてブレーキを緩めてはいけない。
かつてABSのないクルマでは、タイヤのロックを避けるためにブレーキを踏んだり緩めたりするポンピングブレーキが使われることもあった。
しかし、ABS装着車の緊急ブレーキでは、ドライバーがペダルを何度も踏み直す必要はない。もっとも、ABSもESCも、タイヤが路面との接触を失っている状態では十分な効果を発揮できない。
ハイドロプレーニング現象を起こさないよう、雨の日は速度を控え、水のたまったわだちを避けるなど、事前の運転操作こそが大切なのだ。
雨の日のスリップ事故を防ぐ! タイヤの残り溝と空気圧が命を守る
スリップしてからどう対処するかも大切だが、それ以上に重要なのが、そもそもタイヤを滑らせない運転をすることである。
雨天時は晴天時と比べてスリップ事故が起こりやすく、とくに雨の降り始めは注意が必要だ。路面にたまったホコリや泥、油分などが雨水によって浮き上がり、路面が滑りやすくなるためだ。
そして見落とせないのが、タイヤの残り溝である。
JAFが実施したテストでは、100km/hから急ブレーキをかけた際、乾燥路面では新品タイヤと摩耗したタイヤの制動距離に大きな差がなかった一方、濡れた路面では大きな違いが出た。
残り溝7.6mmの新品タイヤと、残り溝3.1mmの摩耗したタイヤを比較すると、ウェット路面での制動距離は摩耗したタイヤのほうが約1.5倍も長くなったという。これは見逃せない数字だ。
日本では乗用車用タイヤの残り溝が1.6mm未満になると使用できないが、だからといって1.6mmまで安心して使えるという意味ではない。
残り溝が減るほど排水性能は低下し、雨の日のブレーキ性能や旋回性能にも悪影響を及ぼす。
タイヤの溝がまだ残っているから大丈夫、という考えは改めたい。
また、タイヤの空気圧も重要だ。空気圧が適正値から外れると、タイヤ本来の性能を十分に発揮できなくなるおそれがある。
空気圧は車両指定値に合わせ、定期的に点検することが基本だ。さらに雨の日の運転では、次のことを心がけたい。
・晴天時よりも速度を控える
・前走車との車間距離を十分に確保する
・カーブに入る前に減速を済ませる
・急ハンドル、急ブレーキ、急加速を避ける
・水たまりや深いわだちをできるだけ避ける
・タイヤの残り溝と空気圧を定期的に確認する
とくにカーブでは、曲がりながら急ブレーキを踏むような操作は避けたい。
タイヤには、曲がるための力と止まるための力を同時に受け持つ限界がある。旋回中に強いブレーキをかければ、グリップ力の限界に達しやすくなるからだ。
雨の日はカーブの手前で十分に減速し、無理のない速度で曲がる。これだけでもスリップの危険を減らすことができる。
もうひとつ覚えておきたいのが、4WDだから滑らないという考えは間違いだということ。4WDは発進時や加速時の駆動力確保に有利な場合があるが、ブレーキ性能やタイヤのグリップ力まで万能になるわけではない。
SUVや4WD車であっても、濡れた路面で無理な速度を出せばスリップする危険はある。そして、もし走行中にタイヤがズルッと滑ったら、何よりも慌てないことだ。
前輪が滑ったらハンドルを切り足しすぎない。後輪が滑ったらクルマの回転を抑える方向へ適切に修正する。ハイドロプレーニング現象が起きたら、急激な操作を避けてタイヤの接地回復を待つ。
そして衝突を避けるために緊急停止が必要な時は、ABS装着車ならためらわずブレーキを強く踏み続ける。
もちろん、実際のスリップでは前後輪が同時に滑ったり、滑り方が急激に変化したりすることもある。状況によって最適な操作は異なり、どんな操作でも必ず立て直せるわけではない。
クルマの運転がうまい人とは、滑ってから見事に立て直す人ではなく、滑るような状況をつくらない人なのだ。
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