ハッキリ言おう。テスラという車からは車好きが慣れ親しんできた「車っぽさ」がほぼ感じられない!! 今までの車と比べると存在そのものが異端なだけに、『どんな車なのか』がぼんやりとしか見えてこない。
テスラとはいったい何が凄くて、どこが従来の“車”と違うのか。それを明らかにすべく、モデルS(価格961万6000〜1767万9000円)のうち、最も高出力モデルのP100Dを試乗。
“車っぽくない車”を、あくまで“従来の車”目線で評価する。
文:渡辺陽一郎/写真:藤井元輔
テスラ モデルSは『草食を装った肉食系EV』だ!!
電気自動車は一般的にはエコカーの代表だ。大人しく走るイメージが強い。俗っぽい表現をすれば草食系に属する。
ところが試乗したテスラモデルS P100Dは違う。前後にモーターを配置する4WDで、システム最高出力は600馬力を上まわる。
停車状態から100km/hまでの所要時間は、フル加速で2.7秒というから、Lサイズの5ドアハッチバックでありながら動力性能はホンダNSXなどのスーパーカーと同等だ。
一般公道だから普通に走っただけだが、それでも高速道路上で巡航中にアクセルペダルを深めに踏み込むと、一切の時間差を置かずに強烈な加速を開始した。
『激しい加速と無音の組み合わせ』が異次元すぎる!!
一般のエンジン車が静かな巡航状態からフル加速する時は、ATとMTを問わずシフトダウンして加速に移る。予めギヤを下げてエンジン回転を高めても、回転上昇に伴って動力性能が盛り上がる。
ドライバーはこの間に「さあ行くぞ!」と心の準備をするが、テスラモデルSはアクセルペダルを踏み込んだ直後に、いわばワープというか、前方へ瞬間移動する感覚だ。
電気自動車だからエンジンを搭載せず、遮音も入念に行われ、ほとんど無音で急激に速度を増すこともワープ感覚の理由だろう。
今まで経験したことのない加速感だ。旅客機の加速力も強いが、エンジンの音が聞こえるから速さが聴覚によって裏付けられる。新幹線は音をあまり発生させずに加速するが、乗客が車内を歩いていることも考えられるから抑制を利かせている。テスラモデルSでは、『激しい加速と無音の組み合わせ』が凄いと感じさせる。
電気自動車だからシフトアップをせずに、激しい加速が継続するところも凄さの秘訣だ。シフトアップをすれば一瞬の息継ぎができて安心するが、テスラモデルSにはそれがなく、得体の知れないちょっとした恐怖も感じた。
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