日産が2020年6月24日に発表、同月30日に発売開始した新型コンパクトSUV「キックス」。これまでお伝えしていたとおり、受注は好調なのだが、新型コロナ禍でサプライヤーからの部品供給が遅れ、スムーズな生産ができない状況に陥っていた。
そのため、ボディカラーによっては8月に成約しても、納車が2021年2月以降になるというケースも発生していた。
しかし、ここにきて日産が納期改善に本腰をいれてきたという。2020年11月から本格化するという、その納期短縮の最新情報をお届けする。
文/遠藤徹
写真/編集部
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■ネックとなっていた納期問題が解決へ
日産は2020年11月から「キックス」を大幅に増産、納期の短縮を図る方針である。11月上旬現在では発売以降の受注累計は1万8000台以上に達している。
これまで月産3000台規模で供給していたことから、納期は3カ月待ちの2021年2月中旬頃に延びていた。これをこの11月から月産5000台規模に増産、これによって早急に受注後1カ月以内に納車できるように態勢を改善する方針である。
現在、キックスの組み立ては同社のタイ工場で行っている。e-POWERユニットは日本から輸出し、現地で組み付け日本に逆輸入する方式としている。船での輸送のため、ラインオフ後船積みし出航してから日本につくまで約1カ月かかる。
それから日本国内の工場で最終の完成検査を行い、販売店に配車している。成約しユーザーに届けるまで新車整備、オプション&付属品の取り付けをしてから登録して納車するので、さらに2週間程度を要することになる。
成約してから1カ月以内とこれまでの3分の1に短縮するには、受注してからオーダーし、生産開始するのでは間に合わないことになる。販売店ではあらかじめ数カ月後の需要を見込んで、グレード、ボディカラー、オプション&付属品を指定して発注する方式に改める必要がある。
これに対してはすでに一部、実施に踏み切っている。幸いグレードは標準の「X」と「X ツートーンエディション」のふたつしかなく、受注構成比も約半分ずつで、ボディカラー、オプション&付属品もこれまでの経緯からブリリアントホワイトパール、ブリリアントシルバー、ピュアブラック、プレミアムホライズンオレンジがメインと判明しているので、見込み発注がしやすい状況にある。
オプション&付属品もナビ、ETC、ドライブレコーダー、コーティング、フロアマット、サイドバイザーなどが中心になっているので、こちらも装備の発注をしやすい状況にある。
ただこれ以外のプラス装備や2トーンカラーだと、見込み発注が難しいので1カ月程度納期が先送りされる場合もある。11月の増産前までは月産3000台規模だったが、これを5000台レベルに引き上げることで、2021年以降は登録台数も5000台以上に引き上げることが可能になる見込みである。
こうした増産による納期の短縮は販売店にとっては朗報である。これまで日産の新型車は2020年2月25日に発売した軽自動車の「ルークス」だけで、ほかの登録車はモデルが古い車種ばかりで、売れ行きがよくないうえに大幅値引きで販売せざるを得ないから、1台あたりの収益は減少傾向にある。
キックスが唯一の期待の新型車になっているわけだが、これまで供給台数が少なく、納期が長くなっていたので、収益向上に十分に貢献できなかった。これが大幅な増産で供給台数を増やせば、登録台数も増え販売店の収益の改善に大きく貢献できるようになる。
新型車であり人気が高いので、値引き幅も車両本体からは5万円程度、オプション&付属品を含めて10万円強で売ることができる状況なので、メーカーだけでなく販売店にとっても好都合な状況になっている。
さらに購入するにあたっては現金よりも残価設定クレジットを利用するユーザーが多いので、こちらの金利のバックマージンも収益引き上げの後押しになっている。11月から増産しているが、ラインオフし、この分が日本に入荷するのは1.5カ月以上かかるので、本格的に納車が早まるのは2021年になってからになりそうである。
首都圏にある日産店で、キックスの標準仕様 X ブリリアントホワイトパール(車両本体価格292万2700円)にオリジナルカーペット、プラスチックバイザー、ナビ、ドライブレコーダー、ボディコートなど50万円強のオプション&付属品を付けて弾いて貰うと法定、法定外費用を含めて、支払総額は370万円強となった。
第1回交渉での値引き提示額は車両本体から5万円、オプション&付属品から10万円程度となっている。残価設定クレジットを組むと実質金利は4.9%で3年後の残価率は54%、4年後は47%、5年後は40%とかなり高率の設定となっており、リセールバリューが高いのも強みとなっている。
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