クルマを買う時にも税金を取られ、維持するにも自動車税やガソリンの二重課税、さらには若い人にも乗ってもらいたいのに年齢が低いほど高い任意保険など、日本でクルマを乗るのには多くのお金が必要になる。
こんなにお金のかかる日本だが、では海外に目を向けると事情はどうなのか? 北米はもちろん、ヨーロッパではクルマにかかるお金はどうなっているのか?
日本でクルマを所有することは、海外と比べると割高なのか? 筆者のアメリカでの体験をもとに話を進めたい。
文/桃田健史
写真/Adobe Stock(siro46@Adobe Stock)、TOYOTA
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■時代の変化か? 「所有しない」とクルマを手放す人が増加した日本
まずは、日本の現状から見ていこう。
ソニー損保がインターネット上で1000人から有効回答を得た「新成人のカーライフ意識調査」(2019年11月実施、2020年1月結果公表)によると、運転免許保有率は56.4%と約半数だが、マイカー保有率は14.8%で数値としてかなり低い印象がある。
クルマを所有しない理由で最も多かったのが「購入費用を負担に感じる」という回答だった。こうした思いは若者に限らず、「クルマは維持費がかかるから、所有しない」として、所有車を手放す人が全世代で少しずつ広がっている。
時代を振り返ってみると、昭和の頃はもちろんのこと、平成に入ってもしばらくの間は、若い男性にとってクルマは自由な移動を手に入れるための生活必需品であり、また自己主張するためのファッションアイテムとして必須だった。
当時は、クルマにかかる費用の大きさに対しては「社会の常識であり、受け入れることが自然」という風潮があったと思う。
■海外と比較する自動車の維持費 日本はアメリカの約29倍!?
クルマの維持費が高いことについて、自動車メーカー側は業界団体の日本自動車工業会を通じて「主な要因は海外(の一部)と比べて税金が高いからだ」と主張している。
具体的な例として、排気量2000cc、車両重量1.5トン以下、JC08モード燃費値20.5km/リットル(CO2排出量113g/km)、車体価格240万円で比較した。
すると、新車購入から13年間保有した場合の、保有に対する税金の総額比較では、日本の総額が62.8万円(うち、自動車税が46.8万円、自動車重量税が16.0万円)なのに対して、アメリカはたったの2.2万円なのだ。日本はアメリカの約29倍と超高額だ。
同様の比較でドイツは日本の約4.9倍、そしてイギリスは約2.2倍となる。
購入時の税金では、日米欧がともに高い。そのなかで、日本の消費税は、欧州の付加価値税より低く、アメリカの小売り売上税よりと比べると少しだけ高い。なお、アメリカでは州や郡・市によって小売り売上税はかなり違う。
筆者がアメリカではじめてクルマを購入したのはいま(2021年)から40年近く前だが、最初に自動車税の支払い請求が来た時、「あれ、このあとも何か追加請求がくるのか?」と思うほど、数十ドル(数千円)の少額請求に違和感を持った。その後、複数の州でさまざまなクルマを購入してきたが、自動車税の安さにはすっかり慣れてしまった。
また、州によってシムテムが多少違うが、ステートインスペクション(日本の車検に相当する定期的な車両検査)も、自分でクルマを街角の専門業者に持ち込み、作業時間は30分程度で費用は数十ドル(数千円)で済む。
アメリカでの話を続けると、税金以外でも自動車の維持費は日本と比べて圧倒的に安い。
1980年代以降、全米州内のほぼすべての主要都市、また代表的な中規模都市に、自家用車またはレンタカーで訪れてきたが、その上で感じるのが、高速代の安さだ。
そもそも、フリーウェイと称されるように、自由に移動できて、しかも基本的に無料であるのがアメリカの高速道路だ。
例えば、西海岸のロサンゼルスから、米南中部のテキサス州ダラスまで、フリーウエイ10号線などを使って途中、アリゾナ州とニューメキシコ州を通過する約2400㎞の道のりで、高速代は1000円にも満たない。
全米各地を巡って、有料の高速道路が最も多いと思うのは、リゾートエリアが多いフロリダ州や、北部のニューヨーク州や中東部のオハイオ州などだが、その料金も日本と比べるとかなり安い。
また、2000年代以降、都市部では日本でいうETC(自動高速料金徴収システム)を導入するケースが徐々に増えてきた。
ただし、日本のような数万円するETC車載器ではなく、高速道路管理会社への高速道路支払い用クレジットカードの申請時に手渡される、フロントガラスに張る無料の受信カードを使うケースが多い。
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