3月22日からオーストラリアで開幕する2018年のF1。トロロッソ・ホンダにも注目が集まるなか、F1の「景色」が変わろうとしているーー。
F1では、これまで華やかなグリッドガールたちが、各国のグランプリを彩ってきた。そのグリッドガールが今年から廃止され、代わりにグリッドキッズが導入されることが決まっている。
なぜ、グリッドガールは廃止されるのか? そして、そこに「正義」はあるのか? F1ジャーナリストの津川哲夫氏が解説する。
文:津川哲夫
Photo:Getty images/RedBull Content Pool
ベストカー2018年3月26日号
グリッドガール廃止の裏にある“アメリカ的な問題”
F1からグリッドガールが消える!
最近は昔のようにセクシーで挑発的なスタイルではなく、民族衣装やスポンサーのユニフォームなどシックなスタイルが多くエレガントで、ギスギスしたグリッドに華やかな潤いを与えてくれていたのに。
しかし、この数年、巷では男女同権、女性蔑視、女性尊重等々の問題が語られ、レースだけでなくあらゆるシーンで女性の尊重が重視され、女性への軽佻な見方が非難されてきた。
特にグリッドガール廃止の裏側にはアメリカ的な問題がある。ハリウッドに起こった慢性的なセクシャルハラスメントに対する抗議運動“#me too”。これが怒濤の勢いでアメリカ中に広がり、ハリウッドに留まらずアメリカ議会にまで広まり、今や世界の潮流となった。
F1は現在“リバティメディア”というアメリカの巨大メディアグループがその商業権を持っている。彼らがアメリカでのF1展開を重視しているのは言うまでもない。
メディアユーザーの半分は女性、その重要なカスタマーの気持ちを逆なでする事は、全て排除しなければならない。
廃止の持つ意味は社会的アピール
また、F1の本拠地はイギリス。2018年は女性が選挙権を得て100周年目だ。この機に一気に女性軽視の問題が浮き彫りになってきた。
英国国営放送(BBC、いわば英国のNHK)の女性中国特派員長が同じ仕事をする男性との給料格差の大きさを訴え、辞任したことに始まり、一気に女性運動が高まってきた。
したがって、グリッドガール廃止は、女性を尊重しているというリバティメディアとFIA(国際自動車連盟)の重要な社会的アピールなのだ。
廃止自体にはあまり意味はないのだが、このジェスチャーが重要なのが今の世の中、ツイッター世代への対処法というわけだろう。“グリッドガール=女性蔑視”とツイートされれば、現在の情勢ではアッと言う間に炎上しかねないのだから。
ドライバーの多くは廃止に対して「残念、殺伐としたレースシーンでの唯一の潤いだったのに!」と嘆くが、「やはり男女同権へ考えなければならないことだから」と付け加える。
この裏には “FIAがそう決めたのだから反発は許されない”とか“女性に反感をもたれても困る”とかの保身もありそうだ。
もっともグリッドガールをセクシーさという部分だけで見る輩が多いのは事実で、これはなんとかしなければならない。しかし、いつの世でも我ら男子の目線は“美女に釘付け”なのだ。だが、今や美女という判断そのものが、糾弾されるようになってきたのだ。
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