自転車で交通違反をすると、これからは反則金を徴収されるかもしれない。警察庁の検討会が、自転車などに関する中間報告書をまとめ、その中に反則金のことも盛り込んだからだ。
警察庁の統計によると、道路交通法違反で検挙された自転車のうち、起訴されたものは僅か1~2%に留まる。自転車だけを悪者にすべきではないが、対自動車の死亡・重傷事故のうち、約7割には自転車側にも法令違反が認められるという。
反則金制度とともに自転車の在り方そのものやインフラ整備面での課題もまだまだ多いのが現状といえそうだ。
文/渡辺陽一郎
写真/AdobeStock、TOYOTA(メイン写真=misu-Stock.Adobe.com)
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■期待大きい自転車反則金制度ながら懸念も
自転車は、道路交通法ではリヤカーなどと同じ「軽車両」に分類される。車両だから道路交通法が適用され、飲酒運転、信号無視、一時不停止、無灯火などは、いずれも違反の対象になる。例えば飲酒運転は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金だ。信号無視は3か月以下の懲役または5万円以下の罰金になる。
従って自転車の取り締まりもすでに行われているが、その数は少ない。なぜなら前科の付く刑事罰になるからだ。
例えば乗用車の速度違反であれば、刑事責任が問われるのは時速30km以上(高速道路では時速40km以上)の速度超過で、いわゆる赤キップを切られる。そうなると正式ではなくても、略式の裁判が行われ、軽微な違反のような反則金の納付だけでは済まない。制度的にも手間の掛かる手続きを要する。
自転車の関連した死亡・重傷事故は2017年以降になって増加傾向にあり、警察は摘発を強化しているが、赤キップと同様の略式裁判手続きが必要だから起訴には持ち込まれにくい。交通違反による自転車の摘発件数のうち、道路交通法違反の罪で起訴されるのは1~2%だ。大多数が不起訴になる。
そこで自転車にも、交通違反の青キップに相当する制度を設けようというわけだ。違反で摘発されても、反則金を支払えば略式裁判の必要はない。要は取り締まりを簡単に行えて、違反に伴うペナルティも徴収しやすい。
未成年者でも、運転免許を持っていて、クルマなどを運転中に交通違反で取り締まられると反則金を納める。
しかし、今回の検討内容は、運転免許を持たない14歳以上の人も対象に含まれ(運転免許の保有者が違反しても免許の効力に影響を与えない)、なおかつ刑事罰ではないから略式裁判も省かれる。
「前科が付かない」と聞けば優しい制度のように聞こえるが、それ以上に取り締まる側にとって手続きを省けるから都合が良い。この動向は慎重に見極める必要がある。
また、反則金を支払わせる制度を確立する前に行うべきことも多い。まずは充分な注意喚起を実施したうえで、取り締まりを開始せねばならない。不十分な注意喚起で摘発を進め、反則金を支払わせるのはアンフェアだ。
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