日産は2018年4月20日に行った会見で、①2022年度末までに3車種のEVと5車種のe-POWER搭載車を日本市場に導入すること、②今年度内に複数車線を自動走行するプロパイロットの進化版も実用化すること、また③2021年以降のすべてのインフィニティの新車をEV化、e-POWER搭載車にすることなどをアナウンスした。
3車種のEVと5車種のe-POWER搭載車とはどれなんだ! 一説によると次期スカイラインがe-POWERになるという情報もあるが、e-POWERはFRに適応できるのか? もし適応できないとなると次期スカイラインはどうなるんだ!? といったあたりを検証してみた。
文・写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2018年6月10日号
■次期型V38スカイライン(インフィニティQ50)はEV&e-POWERになる!?
これまで日本市場に冷淡だといわれてきた日産だが、e-POWERとプロパイロットの人気に後押しされ、攻勢に転じた。日本を「ニッサンインテリジェントモビリティ」技術の主力市場と捉え、シェアリングサービスの拡大、販売ネットワークの刷新、拡大につとめていく方針も示した。
e-POWER、プロパイロットとリーフは試乗して購入を決める顧客の率が非常に高いという。情報が集めやすい近年は、買うクルマを決めてから販売店に訪れる顧客がほとんどだが、これらの技術は試乗の効果が極めて大きいとのこと。そこに商機を見出しているというわけだ。
日産は2022年度までに国内の販売台数に占める電動車が40%になり、2025年度までには半分になるとしており、また、2021年度以降の高級車ブランド・インフィニティの新車はすべてEVもしくはe-POWER搭載車にするとしている。
e-POWERはノート、セレナで好評を得ているとおり、実用車に合うパワーユニット。エンジンで発電し、新鮮なドライブ感覚が魅力なのは確かだが、インフィニティのような高いパフォーマンスを要求されるプレミアムゾーンのクルマにふさわしいのかは疑問。これに関して鈴木直也氏はこう分析する。
「発電用のエンジンをパワーアップし、強力なモーターを使えば高いパフォーマンスは発揮できる。しかし、問題は駆動方式で、インフィニティに多いFRや4WDに使うとすれば、モーターをリアもしくは前後に配置するか、ガソリン車のようにプロペラシャフトを用いなければならない。つまり、新しいシステムが必要ということ。そこまでe-POWERに投資できるかは疑問だ。インフィニティはEVに特化したブランドを目指すということだろう」
海外でインフィニティとして売られている日本の日産車で最も有名なのはスカイラインだ。現行のV37型は2014年にデビューし、次期モデルが登場するのは2020~2021年あたりと予想される。もしも登場が2021年度以降(2022年4月以降)になるのであればe-POWERもしくはEVになるということだが、その前にインフィニティ最後のガソリン車として登場する可能性もある。
その場合、北米仕様の現行モデルに搭載されているV6、3Lツインターボエンジンに48Vモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドというのが妥当な線だろう。最近の欧州プレミアムメーカーがよく使う手法だが、ベンツ、BMW、アウディのような高価格で販売するのは難しく、どこまでコストを下げられるかが問題となる。
日産は2020年までにEV専用プラットフォームを実用化すると明言している。フロアにバッテリーとワイヤレス充電システムを置くもので、コンセプトカーとして発表したクロスオーバーカーのIMxは前後ツインモーター4WDで合計320kW(435ps)を発揮する。
IMxは前述の「2022年度までに3車種のEV」のなかのひとつのモデルになっており、市販されることは決定済み。車格を考えると次期スカイラインもこの専用プラットフォームを使ったEVに変身する可能性もなくはないが、伝統あるビッグネームをそこまで大胆に変化させることができるのか。技術的には可能でも、ファンやユーザー予備群の気持ちも考慮しなければならない。
クルマは理屈ではなく感情で選ばれるものだ。スカイラインをどうするべきか。そろそろ最終結論を出す時期にきているはずだが、ベストカーはインフィニティ最後のガソリン車になると予想する。
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