世界的潮流として、ものすごい速度でパワートレインの電動化が進むなか、三菱はこの春の上海モーターショーで一台の新型EVのデザイン画を公開した。車名は『エアトレック』。かつて日本で発売されていたライトSUVと同じ名称である。
本稿では、かつて日本で販売されていたエアトレックの歴史も含め、現状わかっていることや、その車名の狙いなどを分析していく。
文/小鮒康一 写真/三菱自動車
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■日本では懐かしいエアトレックの車名
4月19日から28日まで開催されていた上海モーターショーにて、三菱自動車の中国における車両生産・販売合弁会社である広汽三菱汽車有限公司が、新型電動SUV『エアトレック』のデザインを発表した。
現段階では真正面と真後ろのみの公表となっているが、“Electric(電気自動車の「電気」)”、 “Expanding(カーライフの「拡張」)”、 “Expressive(三菱自動車らしさの「表現」)”という3つのキーワードからなる「“e”-cruising SUV」というコンセプトを元にデザインされたというエアトレックは、EVらしい先進的で洗練されたイメージをもつ。
フロントデザインには「ダイナミックシールド」に代表される一貫した三菱らしいデザインアイデンティティを取り入れ、力強い走りを表現するスタイリングにまとめられている。
クルマ好きの方であれば、ここでその車名にピンときたはずだ。そう、「エアトレック」と言えば、2001年にリリースされたクロスオーバーSUVに採用されていた車名である。ご存知のない方のために、まずは初代エアトレックを振り返ってみる。
■ジャンルに拘らないオールラウンダー
初代エアトレックは、ひとつの枠に収まりきらない「スマートオールラウンダー」というキャッチフレーズとともに発売され、特定のジャンルに当てはまらないモデルであることが強調されていた(まだ当時はクロスオーバーSUVという言葉も浸透していなかった時代であった)。
そのため、立体駐車場に対応する全高1550mm以内に収めながらも(一部グレードでは不可)195mmというロードクリアランスを実現していたり、インパネシフトを採用してウォークスルーを実現していたり、ほぼフラットになる荷室を持ち合わせていたりと、各ジャンルの良いところを繋ぎ合わせたような特徴を持っていた。
プラットフォームは6世代目ランサーと共通であったため、デビューからおよそ1年後にはランサーエボリューションGT-Aに搭載されていた2Lターボエンジンと5速ATをデチューンして搭載した「ターボR」というグレードも追加されている。
ランエボのようにAYCなどは備わっていなかったが、ビスカスLSD付きセンターデフ方式のフルタイム4WDを採用し、ランエボGT-Aより100万円ほど安いプライスタグをつけられてたのだからスマッシュヒットを記録してもよかったが、残念ながら人気車種とはならなかった。
さらに半年後には、海外市場で販売されていたRVテイスト仕様を「エアトレック スポーツギア」として追加投入するも、こちらもヒットは叶わず、登場からおよそ4年後の2005年に後継車種となるアウトランダーにその座を譲ることになったのである。
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