長く日本車をリードしてきた欧州車の乗り心地やパワートレーン。しかし日本車もずいぶん頑張ってその差を詰めてきた、いや追いついたなどという話も聞く。日本車と欧州車どちらを購入すべきかで揺れている人も多いかもしれない。
日本車はすでに欧州車に追いついているのか、それともまだまだなのか。実際はどうなのだろう?
こんな時一番頼りになるのは“実際に乗ってみた人の声”。ここでは、通算何百台、何千台もの車に試乗しそれぞれの乗り味や性能を確かめてきた自動車ジャーナリスト鈴木直也氏に、欧州車と日本車の現在を語ってもらった。
本記事は2017年のものです。
文:鈴木直也
写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2017年7月10日号
【乗り心地編】 欧州車の乗り心地は“いい”が定番。では日本車は?
欧州車、それもプレミアムカーの一部にかぎられるのだが、走り出して10mも進まないうちに「ホォー、滑らかだわー!」とため息が出る、そんな乗り心地のクルマがある。
具体的な場面でいうと毎年1月に大磯プリンスホテルで行われる輸入車試乗会なんかがわかりやすい。
クルマを借り出してから西湘バイパスへ向かうホテル構内の連絡路は、路面ザラザラで乗り心地には厳しいシチュエーション。ここで短時間にいろんなクルマを乗り比べてみると、「乗り心地の世界には、上には上があるねぇ」と認識を新たにする。
もちろん、輸入車試乗会にはさまざまな車種が参加しているから、なかにはプアな乗り心地のクルマだってあるのだが、ハイエンドの欧州プレミアムに関しては、乗り心地のクォリティが本当にすばらしい。メルセデスならEクラス、BMWは5シリーズ、アウディだったらA6。この辺から上のクラスになると、乗り心地で勝負できる日本車は見当たらない。
日本車でも、例えばレクサスのGS以上や、日産ならフーガあたりは、価格的にはいまや欧州プレミアムと競合するのだが、乗った瞬間に「ほぉっ!」と声が出るようなスムーズさにはほど遠い。
いちばんの違いは、サスペンションの“感度”とでもいいましょうか、小さくゆっくりとした路面入力に対して、タイヤがしっかり追従してゆく感覚。日本車はここが弱い。
まずは、ショックアブソーバーにもっとコストを振り向けること。そこが第一歩じゃないかと思ってます。
鈴木氏が選ぶ 乗り心地のいい日本車ベスト7
●レクサスLC
●トヨタ クラウンマジェスタ
●トヨタ ミライ
●日産 リーフ
●ホンダ レジェンド
●スバル レガシィアウトバック
●マツダ アテンザワゴン
レクサスLCはスポーツカーだがらソフトではない。でもLCに乗ると、このプラットフォームを使う今後のLSなどに期待が持てる。クラウンは欧州車と異なるソフトな乗り心地に価値がある。リーフとミライはEVやFCVならではの低重心による乗り心地のよさがある。
【エンジン編】 パワートレーン戦略で比較する欧州車vs日本車
最近の欧州C/Dセグメント車は、ダウンサイズターボとディーゼルばっかり。
対する日本車は、ハイブリッド以外はわりと平凡で、相変わらずNAガソリンエンジンが主力。ディーゼルはマツダが孤軍奮闘中で、ダウンサイズターボはホンダやスズキが取り組んでいるが、いまだ主流とは言い難い。
また、トランスミッションに関しても、日欧の選択は対照的。日本車は下のクラスはCVT(無段変速機)が主流でDセグになるとステップATが増えてくるが、欧州車は下がDCT(デュアルクラッチトランスミッション)で上はステップATという棲み分け。CVTは明らかに敬遠されている。
こういったパワートレーン戦略を見ていると、クルマ好きの視点からはやはり欧州車のほうが楽しそうに見える。
過給エンジンの強力なトルク感にNAじゃ対抗できないし、DCTやステップATの自然でリズミカルなシフトフィールも、CVTよりダイレクト感があって好ましい。
日本車のパワートレーン戦略がこうなっているのは、燃費性能に対する要求が厳しいからだけど、もうちょっと「走りの楽しさ」にも目を向けてほしいところですねぇ。
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