バブル期を経た日本の自動車メーカーは、性能至上の自動車開発から地球にやさしいクルマ作りへと舵を切った。
その先鞭をつけたといってもいいのが三菱が送り出した直噴エンジン「GDI(ガソリン・ダイレクト・インジェクション)」だ。
国内自動車メーカーにおける直噴エンジンの先駆者となった三菱のGDIはどのような役割を果たしたのだろうか。片岡英明氏が解説する。
文/片岡英明、写真/MITSUBISHI
【画像ギャラリー】先見の明か!? 早すぎた技術か!? 低燃費高効率のGDIエンジンを搭載した三菱のクルマたち
■低燃費高効率のエンジンを作る
1990年代を前に巻き起こったバブル景気は、経営陣と開発陣を大胆な企画へと導いた。バブル期が収束した後も、その余韻を引きずり、無鉄砲な開発を続行している。
時代は高性能至上主義から地球に優しいクルマ、燃費のいいクルマに移りつつあった。世界中の自動車メーカーがクリーンなクルマの開発に乗り出したが、もっとも勢いがあったのは早くから排ガス対策に取り組んだニッポンだ。
2度のオイルショックを経験し、多くの人は地球にある化石燃料などの資源には限りがあることが分かった。
光化学スモッグに代表される大気汚染は、社会問題として大きくクローズアップされている。クルマの渋滞が慢性化すると、エンジンから吐き出される排出ガスが大気を汚し、これが光化学スモッグを発生させる原因にもなった。
化石燃料を使う内燃機関の弱点は、空気中の酸素と燃焼反応して有害物質を排出することだ。
排気ガスのなかには地球温暖化を左右する温室効果ガス、二酸化炭素(CO2)、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などが含まれ、硫黄分が多い軽油を燃料として使っているディーゼルエンジンは不完全燃焼にともなう微粒子状の煤、PM(パティキュレートマター)の発生も大きな問題となっている。
そこで三菱は、総力をあげて燃費のいい、高効率のエンジンの開発に乗り出した。
三菱は1970年代に三菱クリーンエアシステム(MCA)を開発し、80年代からは気筒休止システムや希薄燃焼のリーンバーンエンジンにも挑んでいる。燃費を向上させるリーンバーンエンジンを発展させたのが「直噴」と呼ばれる筒内直接噴射方式のガソリンエンジンだ。
三菱自動車は、これを「GDI(ガソリン・ダイレクト・インジェクション)」と名付け、96年夏にギャランとスポーツワゴンのレグナムに搭載して送り出した。
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