2018年、日産自動車の新型車はゼロ。厳密に言うと3月にセレナe-POWERが発売され、7月31日には現行型リーフにNISMO仕様が追加ラインアップされるが、型式変更をともなう「新型車」の登場予定はない。そもそも2017年も、フルモデルチェンジは10月のリーフ1車種きりだった。
それでも日産グループ(ルノー、日産、三菱)は、世界販売台数でVWに次ぐ2位の実力を持つ。
となると、日産は日本市場を見限っているのではないか。なんとなくそう感じてしまう。
どうなんだ日産、それでいいのか日産。日産に思い入れの深いクルマ好きの一人としては、「そんなことはない! 日産は故郷である日本市場も頑張って力を入れてゆきます!」と、そういう話が聞きたくて、自動車ジャーナリストの渡辺陽一郎氏に、現在の日産の置かれている立ち位置と、「このモデルはこうしたらもっと売れるんじゃないか」という、惜しい日産車とその改善策を伺ってみました!
文:渡辺陽一郎
■いまの日産は93%が海外向け
今の自動車メーカーは、いずれも海外市場を中心に売れ行きを伸ばしている。ダイハツを除くと、各社とも世界生産台数の80%以上を海外で売っている。日本は「オマケの市場」になってきた。
例えばSUVの商品企画担当者と話をしていると、「女性のお客様が過剰に多いので、フロントマスクの存在感を強めました」などと言う。「女性が多い? ドライバーの大半はオジサンだぞ」と思って聞き返すと「北米の話です」。
セダンの担当者と話をしていて「路面が悪いもので、足まわりを補強しました」。「路面が悪い? 未舗装路は一部の林道くらいだぞ」と思って聞き返すと「ロシアの話です」。
そこで「あのですね、ここは日本なので、日本における開発のねらいを知りたいのですが……」と尋ねると「日本? ああ日本ねぇ、そうですねぇ…」みたいなやり取りが増えた。
この状況の中で、特に国内市場を見捨てている印象の強いメーカーが日産だ。
2017年度(2017年4月から2018年3月)の販売実績を見ると、世界販売台数に占める国内比率は、軽自動車を含めて10%にとどまる。三菱が製造する軽自動車を除いて小型/普通車に限ると、国内比率は7%まで減ってしまう。
日産は2017年9月、完成検査問題に基づいて登録手続きを停止した経緯もあり、そこは差し引いて考える必要がある。それでも国内比率が7〜10%は少ない。日本は完全にオマケの市場だ。
そうなれば当然、国内におけるメーカー別の販売順位も下がる。小型/普通車と軽自動車を含めた2017年度の国内総販売台数は、トヨタ/ホンダ/スズキ/ダイハツに次ぐ5位だった。日産は以前から国内販売で「確固たる2位」をねらっているが、いまだに実現していない。
■せめて海外で売っている仕様を日本でも…
日産は「日本産業」の略称でもあるが、今の日本を見捨てた現状には、多くの日産ファンが失望している。販売店からも「カルロス・ゴーン氏が日産の最高執行責任者に就任して以来、クルマ造りが大幅に変わった」という声が聞かれる。
今の日産で特にダメなのは、国内で新型車をほとんど発売しないことだ。直近の新型車は、2014年2月にデイズルークス、2016年8月にセレナ、2017年10月にリーフという具合だから、1〜2年に1車種の割合になる。そして2018年後半に行われるのは、マイナーチェンジや追加モデルのみとなる。
販売店からは、
「海外では、新しいマイクラやティーダが売られている。3ナンバー車ではあるが、日本でも扱って欲しい。そうすれば生産を終えたティーダやデュアリスなどのお客様に、乗り替えの提案ができる」
と希望している。
今の日産は、販売現場のモチベーションを削いでいるのだ。
また新型のマイクラやティーダを発売すれば、これを目当てに来店した顧客が、既存のノートやキューブを買うこともある。新型車があると、それをさまざまな形で活用して売れ行きを伸ばせる。だから何もしないのが一番悪いのだ。
こんなことは自動車業界では常識だから、それすらしない不作為は、日本を見捨てている証拠だ。
そこで本稿では、売れ行きが伸び悩む日産車を取り上げて、対策などを考えてみたい。
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