■マーチ 2018年5月販売台数 850台
1992年に発売された2代目マーチは、優れた視界とバランスの取れた外観デザインを併せ持つコンパクトカーの傑作だった。2002年発売の3代目は、コストを抑えた「Bプラットフォーム」の採用で安定性と乗り心地に不満を感じたが、外観は個性的で内装の質も相応に高かった。
ところが2010年に発売された現行型は、質を大幅に下げた。「タイの工場が生産しているから」という問題ではない。今後は大幅なマイナーチェンジを行って粗い造りを改善させ、緊急自動ブレーキを装着する手もあるが、もはや遅きに失した印象が強い。抜本的に見直すべきだ。
そうはいってもフルモデルチェンジは難しい。資本提携を結ぶルノーのトゥインゴを日産マーチとして販売するのがいいだろう。
現行トゥインゴの外観は、柔和な印象でマーチに似ている。しかも内外装の造りは、マーチに比べれば大幅に上質だ。エンジンを後部に搭載して後輪を駆動するが、運転して違和感は生じない。後席と荷室は狭いが、マーチと大差はなく、5ナンバーサイズの小さなボディは視界も良くて運転しやすい。従ってトゥインゴは、日本でマーチとして売るにはピッタリのコンパクトカーだ。
■キューブ 2018年5月販売台数 460台
現行キューブは3代目で2008年に発売された。今の日本車には、目を吊り上げて周囲の歩行者や車両を蹴散らすようなフロントマスクが多いが、キューブの表情は適度に柔和だ。周囲との協調性が感じられる。
内装は和風をテーマに仕上げられ、インパネは曲線を描く。ガラスルーフとSHOJI(障子)シェードを装着すると、車内は柔らかい光で満たされる。楽しいことよりも辛いことの方が多く感じられる今の日本には、優しさのあるクルマが必要だと思う。速さ、豪華さ、質感は後まわしで良い。
今のキューブのコンセプトを生かしながらフルモデルチェンジするのが理想だが、それが無理なら、せめて相応に規模の大きなマイナーチェンジを実施したい。曖昧な操舵感や少し粗い乗り心地を見直して、緊急自動ブレーキを作動できる安全装備も加える。
車内が比較的広いから、SUV風の仕様があっても似合う。キューブの外観はシンプルだから、ハイウェイスターのようなエアロパーツ装着車も含めて、いろいろな仕様にアレンジしやすい。
それでもキューブの本質は平和な世界観にある。日産に限らず今の自動車メーカーに求められるのは、安全性の向上と併せて、ユーザーをリラックスさせるキューブのようなクルマ造りだ。
■ジューク 2018年5月販売台数 299台
コンパクトなSUVだが、カテゴリーに収まらない個性がある。2010年の発売当初は人気車になった。8年を経過して売れ行きは下がったが、緊急自動ブレーキを作動できる安全装備を追加するなど、今の日産車ではケアを受けている部類に入る。やや粗い乗り心地に設計の古さを感じるが、選ぶ価値はある。
フルモデルチェンジを実施したいが、それが無理ならバリエーションを充実させる。ノートと同様のe-POWERは必ず搭載したい。SUVなのに駆動方式は前輪駆動の2WDが中心で、4WDは1.6Lターボに限られることも不満だ。ジュークは設計が古くなった日産車の中では、改善による販売の伸びが最も期待される車種だ。
■スカイライン 2018年5月販売台数 35台
今のスカイラインは「日本を見捨てた日産車」の象徴だ。歴代スカイラインは、もともとフルモデルチェンジの度にコンセプトが変わる面があり、7代目で豪華指向になったのを8代目のR32型でスポーティに戻し、9代目のR33型では3ナンバー車に拡大。10代目では再びコンパクト化した。
ただしこれらはいずれも国内で売るための試行錯誤で、ユーザーも好意的に見ていた。8代目ではスカイラインGT-Rも復活して、イメージリーダーの役割を果たした。
ところが2001年に発売された11代目のV35型は、印象が大きく変わった。インフィニティG35として海外でも売られ、日産が日本を見捨てる切っ掛けになった。
そして12代目を経て、2014年に発売された現行型のV37型は、フロントマスクに日産ではなくインフィニティのエンブレムを装着する。全幅は1800mmを超えて、ダイレクトアダプティブステアリングの操舵感は、北米の好みに沿って過剰なほど機敏だ。
日本のユーザーが好んだスカイラインは、前後輪の重量配分が優れた後輪駆動のシャシーに、少しパワフルな吹き上がりの良いエンジンを搭載して、自然で軽快な走りを味わえる等身大のスポーティカーだった。
スカイラインのコンセプトを確立させた開発者の故・櫻井眞一郎氏によれば「運転の楽しい街乗りグルマ」というもので、スカイラインGT-Rも気軽にサーキット走行を楽しめることをねらいにしていた。
要は肩肘を張らず、優れた走りを見せびらかすこともせず、日常の中でスポーティ感覚をさり気なく味わえる。この控え目な日本人の心情に合う運転の楽しいクルマこそ、スカイラインであった。
スカイラインは日産にとって、トヨタのクラウンに相当するクルマだ。長年にわたり日産の象徴的な存在で、スカイラインのあり方が日産のブランドイメージを構築していた。
だからせめてスカイラインだけは、日本のユーザーのためにフルモデルチェンジして欲しい。スカイラインを日本のユーザーに返すべきだ。それは必ず、国内で日産が復活する切っ掛けになる。
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