ランボルギーニ初のSUV、ウルス。ここ最近は高級車ブランドのSUVモデルは珍しくないが、それでもスーパーカーブランドのSUVとなれば別だ。では、通常のランボルギーニのモデルとSUVとは走りで何がどう違っているのだろうか。カウンタックにアヴェンタドール、ディアブロにウラカンなどさまざまな歴代のランボルギーニ車をドライブしてきた武井寛史氏が実際に試乗して検証した。
文/武井寛史、写真/山本佳吾
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■ランボルギーニが突如としてSUV界に参入!
自分でも不思議なのだが、天命なのか今まで数多くのスーパーカーをドライブする機会に恵まれた。そのおかげで少年時代にスーパーカーブームを経験した方々には羨望の眼差しのミウラやカウンタックもドライブさせていただいた。
必然というべきかランボルギーニの主要モデルのほとんどは、シートに座ってアクセルを床まで踏み込んできた。一般道、高速道路、峠、時にはサーキット。さまざまなシチュエーションでドライブした経験は、いまでも鮮明に覚えている。そういう意味では、時代の流れとともに移り変わっていくランボルギーニのラインナップを知るひとりなのかもしれない。
今やランボルギーニは特別なスーパースポーツカーを製造するメーカーとして認知されている。時代に逆らうかのように大排気量エンジンを搭載し、カーボンニュートラルとは真逆の尖った2シータースーパースポーツカーを作っていたランボルギーニが、突如、SUVカテゴリーに参戦してきた。
正直、ウルスにはまったく興味がなかった。個人的な見解だがSUVはしょせん、スーパーな走りを追求したモデルにあらずと考えていたから。「SSUV」という新たなカテゴリーは猛牛の血統を受け継いだスーパーカーなのか!? 今さらだが、ランボルギーニ初のSUVとしてデビューしたウルスについて語ってみたいと思う。
■カウンタックにインスパイアされたデザインの『ウルス』
ウルスは2018年に登場した。同じVW傘下にアウディがあるのでウルスのベースとなるプラットフォームの流用はきく。ランボルギーニがこの分野のモデルを製造するのは容易だった。
ランボルギーニ初のSUVは、スーパーカーの象徴的な存在であるカウンタックをインスパイアしている。この開発思想だけ取ってもウルスへの力の入れ方がわかる。デザインを担当したのはランボルギーニデザインセンターのドイツ人デザイナー、ミィティア・ボルケルト氏(43歳)。彼はランボルギーニの歴代モデルをデザインしてきた名門カロッツェリア・ベルトーネの出身。マルチェロ・ガンディーニ氏が築いてきたDNAを継承する若きデザイナーだ。
ウルスはボディサイズをはじめカウンタックとはまるで違うが、よく観察してみるとフロントウィンドウからルーフにかけてのラインやリアフェンダー、タイヤアーチの形状はカウンタックLP400をイメージさせる。デザインだけで判断すると歴代ランボルギーニの血統を色濃く受け継いでいることに疑いの余地はない。問題はスーパーカーとしてのポテンシャルがあるのかだ。
■ウルス「グラファイト・カプセル」を首都高でインプレッション!
今回、インプレッションしたのはウルスの特別ラインナップのグラファイト・カプセルだ。スペックは通常のウルスと一緒だが、新色のマットカラーで塗られディテールに鮮やかなパステルカラーが入り、その放つオーラはひと際だ。
ドライビングシートに収まると、気になるのがボディの大きさ。直前直右の死角が多い。ちなみに全幅はアヴェンタドールと比較しても14mm大きいだけなのに目線が高くなるだけで不思議と緊張感がある。
シートは座面にほどよい張りがあって、高級な椅子に座っている感覚。武骨なバケットシートとは一線を画すが、ポジション調整は電動スライド式でステアリングも上下前後に動くから自分好みのドライビングポジションに微調整できる。
コックピットは現行のウラカンやアヴェンタドールをイメージさせる。液晶メーターパネルやエアコンの吹き出し口をはじめ、今やランボルギーニの定番ギミックのミサイル発射ボタンを連想させる赤いカバーも健在だ。
インテリアはブラックレザーに質の高いアルカンターラとカーボンで構成され、SUVであってもランボルギーニとしてのこだわりを感じた。6つの走行モードがあるのはウルスだけの機能で、必要かどうか不明だが、しっかり舗装路面のサーキットやクローズド走行向けの「CORSA」モードも存在する。
インプレッションの場所に選んだのは首都高速。東京のニュルと呼んでも過言ではない。大小コーナーと路面のアンジュレーションがあり、ウルスのポテンシャルを測るには最適だ。
■SUVとは思えない!! すべてがモンスターな性能
一般道を運転しているかぎりでは正直、普通のSUVだが、ウルスのポテンシャルを引き出すため合流車線で遠慮なくアクセルを全開にしてやった。一瞬、動き出しが鈍く650psのエンジンでもやはり車両重量には勝てないか……と思った瞬間、目が覚めるような加速を見せ、タコメーターは一気にレブリミット付近まで跳ね上がる。
デフォルトの走行モードでもヤバいくらい速い。歴代ランボと対峙してきた経験を持つが、加速感は想像を超えていた。
驚かされたのは旋回性だ。ルーフの位置が高いから当然、ロールセンターを低くするのは困難だ。でもウルスは全高の低いスーパーカーのような動きで、見た目の印象とはまるで違った。サスペンションのセッティングもレベルが高くて首都高の中高速コーナーでもまったくロールを感じさせない。
ステアリングを切ればダイレクトにタイヤの接地感が手に伝わり、狙ったラインにノーズが向けられる。さらに旋回状態からアクセルを踏み込めば素直に曲がってくれる。コーナーでは今まで試乗してきたSUVとは比較できないほど完成度が高い。
ボトムスピードはスポーツカーと比較しても遜色ないレベルだ。4WDのトルクベクタリング機能も手伝って、素直に曲がっていく感覚はまさにスーパーカー。いい意味で期待を裏切られた。
ブレーキ性能にもランボルギーニのこだわりを感じだ。2.6tもの車重を瞬時に止めるためフロントにはなんと10ポッドのキャリパーを装備。そこにカーボンローターを組み合わせることで高い速度域からでも4輪がしっかり制動して不安感を軽減している。首都高をドライブしていても、まったく危なげなくドライブできるのはこのブレーキがあってこそだ。
■まさにSSUV(スーパー・スポーツ・ユーティリティ・ビークル)
ここまでのパフォーマンスを体感させられると、不要かと思っていたCORSAモードの存在意義が理解できる。好奇心も手伝ってエンジンパワーを解放すべく最もエキサイティングなモードに変更。
するとステアリングの応答性はよりリニアになり、サスペンションの初期入力でも明らかに変化を感じる。中間域の加速はSUVの瞬発力ではない。この車重と巨大なボディでも最高速度が305km/hというのもブラフでなない気にさせられる。
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