「視力は変わらないのに、最近、標識の文字を読めないことが多い」、「スピードを出すと周囲の景色の流れに目がついていかない」。それは動体視力の衰え始めている証拠だ。加齢とともに動体視力はどんどん低下していく。特に、アラフィフ世代以降は放置しておくと、加速度的に動体視力は低下し、それにともない運転技術も低下してしまう。
しかし、対処法はある! それが目の筋トレだ。今回は、運動経験ゼロでもできる、動体視力を呼び覚ます目の筋トレをご紹介しよう。
文/室井 圭、医療監修/伊藤重範(医療法人三九会 三九朗病院 循環器内科専門医・総合内科専門医・医学博士)、写真/写真AC、イラストAC
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運転が下手になる原因は視覚機能の低下にあり!?
スムーズで安全な運転を行い、事故を回避するためには、「認知→判断→操作」を的確に繰り返す必要がある。ドライバーが対象を認識して操作を始めるまでに要する時間(認知・反応時間)が長くなれば、事故を起こす可能性が高くなる。
「認知→判断→操作」を的確に繰り返すために必要な機能が、「視覚」。視覚からの情報は、約80%を占めると言われるからだ。そのため、視覚機能の低下は運転技術の低下に直結する。
特に運転技術を大きく左右する視覚機能が「動体視力」だ。動体視力とは「動くものを見る能力」だが、「動くものを見る→物として脳で認識する→反応する」という一連の反射の過程をまとめた能力のことだ。
つまり、ただ単に見るだけではなく、動くものへの対応スピードを含めた能力が動体視力ということになる。ちなみに、一般的な視力検査でチェックする視力は、「静止視力」と言われている。
動体視力は人や物との距離感や速度を認識する力を大きく左右する要素のひとつ。そのため、動体視力が低下すると、適切な車間距離がとれなくなったり、危険な割り込みをしたり、対向車が近づいているのに右折してしまったりと、危険な運転をすることが自然と多くなってしまうのだ。
アラフィフからは要注意! 動体視力の衰えが加速する!
「動体視力」にはDVA(dynamic visual acuity)動体視力とKVA(kinetic visual acuity)動体視力の2種類がある。
■DVA(dynamic visual acuity)動体視力
動く対象物を目線を動かして捉える能力で、素早い眼球運動が必要になる。例えば、横から突然飛び出した自転車や歩行者に素早く反応するためにはこのDVA動体視力が重要となる。
DVA動体視力は50歳を過ぎた頃から急速に低下が進み、60代以降では20代の若年者に比べて約30%低下することが確認されている(※)。実際、アラフィフになったら運転中に以前より標識を認識しづらいと感じることが多くなったような気がするという人も多いのではないだろうか?
■KVA(kinetic visual acuity)動体視力
遠くから近くに近づいてくる物体を認識する能力。自分に近づいてくるものをどれだけ早く認識できるかと、対象物にピントを合わせる能力だ。近づくボールにバットを当てる時、高速で走行中に近づく標識や案内板を短時間で読み取る時などにはこのKVA動体視力が大切になる。
こちらの機能も50代頃から徐々に低下が進み、50代後半以後では30歳までの人と比べて約 20%以上低下することが報告されている(※)。
どちらの動体視力も40歳代後半で顕著に低下することがわかっている。そのため、アラフィフにさしかかったら、より慎重な運転をする必要があるのだ。
※参考 : 「高齢ドライバへの応用を考えた運転視力測定システム」(名城大学 中野ら)
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