近年多くのクルマで採用されている「スマートキー」。キーを持っているだけで、「ドアロックの解錠/施錠」と「エンジンの始動/停止」ができる便利なシステムですが、トラブルも発生しています。
ここでは、スマートキーの仕組みを解説するとともに、そのメリットとデメリットについて、そして最新のスマートキー事情についても、解説していきます。
文:Mr.ソラン、エムスリープロダクション
アイキャッチ写真:写真AC_Hinamalu
写真:写真AC、トヨタ
【画像ギャラリー】便利な反面、トラブルも… スマートキーのメリットとデメリット
「キーレスキー」から「スマートキー」へ
スマートキーが普及する前、クルマのキーシステムは、「キーレスキー」システムが主流でした。キーに組み込まれた(LOCK/UNLOCK)スイッチによって、遠隔操作で解錠/施錠を行うキーレスキーは、1985年に発売されたホンダの3代目「アコード」に国内で初めて採用されたのを皮切りに、比較的安価な電子キーとして普及します。
そのキーレスキーを発展させたのが、「スマートキー」システムです。キーをポケットやバッグの中にいれたままで、クルマに近づく/離れる、またはドアノブ(スイッチ)に触れることで解錠/施錠ができ、エンジンンもキーを使わず、プッシュ式スタートボタンで始動/停止できます。日本で初めて採用したのは、2000年に登場したトヨタの3代目「セルシオ」でした。その後高級車だけでなく、小型車や軽自動車にも急速に広がり、現在に至っています。
スマートキーシステムの名称やシステム構成、操作方法は、メーカーによって多少異なります。例えば、トヨタは「スマートエントリー&スタート」、日産は「インテリジェントキー」、ホンダは「Hondaスマートキー」とよんでいます。
IDコードの照合により、解錠/施錠する
スマートキーシステムでは、クルマとスマートキーそれぞれに、お互いの電波を認識するための送信機と受信機が内蔵されています。また、クルマには制御の中核となる「照合ECU」があり、スマートキーと車両間のIDコードの照合やスマートキー位置を確認し、「ボディECU」や「エンジンECU」を制御します。
ドアロックの解錠・施錠時は、
・スマートキーを携帯した人がドアまで1~1.5m内の距離に近づくと、車室外アンテナから発信される微弱な電波をスマートキーが受信
・スマートキーからクルマへIDコードを返信
・クルマ側でIDコードが一致したと判断した場合、ドアに近づく、またはドアノブ(スイッチ)に触れたときに解錠
・施錠時も同様、ユーザーがクルマから一定距離離れる、またはドアノブ(スイッチ)に触れた時に、ID照合して一致すれば施錠
エンジンスタート時は、
・シフトポジションがパーキング(P)、またはニュートラル(N)位置で、ブレーキペダルが踏まれていることを確認
・スタートボタンが押されると、車両とスマートキー間でID照合
・IDが一致すれば、エンジン始動
スマートキーのメリットとデメリット
スマートキーの特長は、クルマの解錠・施錠とエンジン始動・停止という一連の動作が簡単になることですが、具体的にメリットを挙げてみましょう。
・キーを出し入れする機会が減るので、キー紛失のリスクが減る
・雨天時や買い物等で手がふさがっていても、解錠/施錠が簡単にできる
・キーを挿し込んで回すというエンジン始動/停止動作が、プッシュ式スタートボタンだけに簡略化できる
一方で、以下のようなデメリットもあります。
・車内にキーを残してロックする「インロック」になるリスクあり
通常は、スマートキーが室内にあればロックはかからないが、トランクに置き忘れたり、電波の影響やキー内蔵電池の消耗具合によってはロックがかかる事例あり
・電池切れで作動しなくなる
スマートキー内蔵のマージェンシーキーを使えば、ドアロックを解錠して始動可能だが、その方法がユーザーには十分認知されていない
・スマートキー紛失時に再製作時の費用が3万円以上と高額
キーとして最も重要なセキュリティに関しては、従来キーの場合、「ピッキング」による被害がいまも後を絶ちませんが、スマートキーの場合は、ピッキングのリスクは改善されるものの、電波傍受によって解錠・始動してクルマを盗む「リレーアタック」という盗難が散発しています。
従来キーよりも、スマートキーはセキュリティとしては高くなっているのですが、残念ながら、クルマの盗難は犯罪側との技術の競争なので、スマートキーだから必ずしも安心ということではありません。
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