「ノートAUTECH」に始まり、「ノートオーラ」、「ノートAUTECHクロスオーバー」、そして「ノートオーラNISMO」と、すべてノートの派生車ではあるが、日産は続々と新しいコンパクトカーをラインアップさせている。
コンパクトモデルは、だいぶ出そろってきた感もあるが、いま一番欲しいモデルがまだ登場していない。それは…。
文:吉川賢一
写真:NISSAN
「クロスオーバー」はAUTECHの起案によるもの
2021年10月に発売開始となった、ノートAUTECHクロスオーバー。ノートAUTECHをベースに、車高を25mmほどハイリフトし、大径タイヤと専用16インチホイール、樹脂フェンダーモール、ルーフモールド、そして前後にクロスオーバー専用エンブレムを装備、という内容で登場したモデルだ。いわゆる「なんちゃってSUV」ではあるが、フェンダーモールを装備しながらも全幅1700mmに収めて5ナンバーサイズを死守してきた。
このノートAUTECHクロスオーバーの企画は、AUTECHが日産に提案したものだそうだ。純正カスタムメーカーとしてのAUTECHに任せたのかも知れないが、おそらく、この手の「なんちゃってクロスオーバー化」に対して、日産はあまり乗り気ではなかったのだろう。
キックスはプラットフォームが古い
2020年6月に日本導入となった、日産のコンパクトSUV「キックス」。このキックスのプラットフォームは、現行マーチと同じVプラットフォームであり、これは先代E12ノートにも採用されていたものだ。つまりプラットフォームベースでいえば、キックスは、先代のE12ノートのSUV版ということになる。
そもそも、キックス(P15型)は、2016年にブラジルで発売開始となったモデルで、南米や中東をメインとして開発されたモデルだ。当時、日本市場ではコンパクトSUV「ジューク」(2010-2019)が販売されており、ジュークは、Vプラットフォームよりもさらに前となるBプラットフォームと古いものの、独特なデザインが醸し出す、「ブサカワ」なキャラクタがウケていたため、キックスに置き替える話には、ならなかったのだろう。
ちなみにVプラットフォームは、Bプラの性能は維持したまま「コストと質量」を極限まで削いだ、いわばBプラの廉価版のようなプラットフォームだ。途上国向けとして、サスペンションのリンクの板厚やゴムブッシュのサイズまで、ミリミリと設計を切り詰めていったものであり、かなり大胆なことがなされていた。
ジュークが去り、代わりにキックスが導入されたことで、プラットフォームは少し新しくなったのだが、いまルノー日産三菱が新型車に採用しているのは「CMF(コモン・モジュール・ファミリー)」に基づくプラットフォームだ。ノートは、ルノーのルーテシアやキャプチャーも採用する「CMF-B」という次世代上級小型車向けのプラットフォームを採用しており、当然、続々と出てきた派生車たちも同じ。
ひと世代古いプラットフォームで、ヤリスクロスのような強敵に勝てるはずがない。プラットフォームが古いキックスではなく、より競争力のある、このCMF-B、もしくはもうひとまわり小さい「CMF-A+」プラットフォームでのコンパクトSUV、それが、筆者が今すぐにでも日産の国内ラインアップに追加してほしいと思うモデルだ。
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