2021年11月2~5日、アメリカ・ラスベガスで開催されたSEMAショーの会場外にて、専用地下トンネルをテスラで無料送迎するLVCC LOOPが本格稼働した。
この世界初となる、地下トンネルのなかを走らせるテスラによる無料シャトルはどんなものだったのか? 自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏がレポート!
文/加藤久美子(Kumiko Kato)
写真/加藤博人(Hiroto Kato)
■実は税金投入ゼロ!世界初のシャトルシステムを作ったのは?
まさに、withコロナの時代に相応しい? テスラを使った未来感覚の無料シャトル「LVCC LOOP」(ラスベガスコンベンションセンター・ループ)が11月2~5日に開催された世界最大の自動車アフターマーケット見本市「SEMAショー」の期間中、本格稼働した。
専用の地下トンネルを使ってラスベガス観光局が保有するラスベガス・コンベンション・センター(Las Vegas Convention Center、LVCC)の3ヵ所ある展示ホールを全長1364メートルの地下トンネル2本で結ぶ。これまで徒歩で40分以上掛かっていた距離をわずか3分で移動できる。
無料のシャトルシステムといえば空港~ホテル、駅~イベント会場などをバスや大型バンで移動するのが従来の方法だが「LVCC LOOP」はこのために掘った専用の地下トンネルを使って粛々と乗客を運ぶ。
使われるクルマはテスラのセダンやSUVで、最大4名の利用客を乗せることができる。テスラだけが走れる専用道を使っているので他の交通は一切入ってこないし渋滞に巻き込まれることも絶対にない。
このシステムはラスベガスにてさらに拡大中で、今後は渋滞が激しく公共交通機関が発達していない世界各地の都市に続々と設置される計画だ。
ちなみにこの事業は莫大な税金を投入して行われる公共事業のように見えるが、実は税金は全く使われていない。総工費は55億円にも上るがすべて私企業によって建設されている。
その私企業とは「ザ・ボーリング・カンパニー」という会社で、オーナーはテスラ社、スペースXなどを所有する個人資産35兆円のイーロン・マスク氏である。
2016年に立ち上げた地下トンネル掘削会社であるが、きっかけとなったのはマスク氏自身が「ロサンゼルスの心を病むようなひどい渋滞に嫌気がさした」ことだとか。確かにロサンゼルスの渋滞は世界ワーストともいえるひどいもの。地下に掘った専用トンネルなら渋滞の影響は一切受けることがない。
1本目のトンネルは2019年11月15日に掘削が開始され、1日約15メートルのペースで約3ヵ月後の2020年2月14日に完了した。一般客に向けた「LVCC LOOP」として開業したのが2021年4月。同5月には1時間で約4400人の乗客を運べることが証明されている。
11月2日に開催されたSEMAショーが開業以来、初めてのフルスケール運用となった。車両は合計約70台用意されているが防災を理由に同時にトンネルを走れるのは11台程度までと決まっている。
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