日本車を代表するクルマ…と言っても過言ではないクラウンが、揺れている。1955年にスタートしたクラウンの歴史は、現在まで66年、15代に渡って受け継がれてきた。日本人が日本のユーザーへ向けて作り上げるクラウンは、トヨタのラインナップの中でも特別な存在である。
本稿の筆者も、かつてトヨタ店に勤務し、クラウンを販売してきた。クラウンの契約をもらう瞬間は、いつも緊張が走っていたのを思い出す。
現行型となる15代目クラウンは2018年に登場しているが、早くも次期型の噂が数多く挙がっている。本稿では、トヨタ販売現場にとってのクラウンの存在とはどのようなものか、また相次いで飛び出す次期型クラウンの噂について、販売現場ではどのように受け止められているのか、クラウン販売最前線の情報をお伝えしていく。
文/佐々木 亘
写真/TOYOTA、ベストカー編集部
■トヨタ営業マンにとってクラウンの存在とは
現在のような全チャネルで全車種併売となる前、各チャネルには、新人営業マンが憧れる花形車種があった。ネッツ店ではアリスト(後にヴェルファイアへ変わる)、カローラ店ではカムリ、トヨペット店ではマークXという具合だ。もちろんトヨタ店ではクラウンがこの座につく。
各チャネルの上級セダンを販売するということは、一人前の営業マンになった証である。こうした花形車種を販売するには、オーナーとの関係づくりも重要だ。
とりわけクラウンは、クルマがよくても簡単に売れるものではない。日ごろの販売店とユーザーの関係が良好でことが必要だ。こうした関係は一朝一夕で作り上げられるものではなく、クラウンを販売するためには、時間と経験が重要になってくる。
クラウンは爆発的に売れるクルマではないが、ピタリと売れなくなるクルマでもない。コンスタントに毎月1台ずつ売れていくことも珍しくないのだ。1か月に1台ずつ、年間に12台のクラウンを売ることができるようになれば、心技体が整ったトヨタのトップセールスマンと言っても過言ではないだろう。
トヨタというメーカーを育て、販売するディーラーを育てるクラウンは、営業マンとオーナーの関係性を強くし、人の絆を育む特別なクルマだ。日本的な古き良き職人達を束ねる「親方」のような存在なのである。
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