世界にはいろいろな名車があり、だからこそクルマ趣味は尽きない。
知っている車種も知らない車種も、その歴史とともに振り返る企画があったらな……、ということでかつてベストカー本誌で掲載していた、いのうえ・こーいち氏の「旧車倶楽部」。今回はベストカーWebにてホンダNSXを歴史とともに振り返ってもらおう。
ホンダが世界に向けてスーパーカーを定義したホンダNSX。横置きミドシップやオールアルミボディなどその逸話は数知れず。ところで「NSX」はなんの頭文字が知っていますか!?
文/写真:いのうえ・こーいち(トップ写真=HONDA)
■「和製フェラーリ」の存在感とその意義
はてさて、5年ほど前まで「ベストカー」誌で連載されていただいたときは、佳き時代の日本車をひとつひとつイラストとともに紹介した。その数全部で33モデル。とても興味あるのに紹介しそびれたモデルもあった。
その最右翼のひとつがホンダNSXである。世界レヴェルのスーパーカーとして誕生したのは1990年代のこと。考えてみたら、もう30年もむかしのことになる。いまや立派なヒストリックカー、趣味のクルマになっているようだ。
機会は減ったけれど、時おり出遇うNSXは、あーだいじにされているなあ、という印象が強く感じられるものばかりだ。
「NSX」、つまり新しい(N)未知(X)のスポーツカー(S)を組合わせて、まさしく夢を実現したもの、というネーミングなのであった。それだけにつくる側も大きな意欲で新機軸を盛り込んだ結果、初代ホンダNSXは唯一無二のスーパー・スポーツとして、いま以って存在感のある忘れられない憧れの一台になっているのだった。
1989年、シカゴで発表されたプロトタイプは、翌90年9月13日に発売された。
エンジンをキャビン直後に横置き搭載したミドシップだったことから、当時のフェラーリ328GTBなどと同じレイアウト。それで「和製フェラーリ」などと呼ばれたのだが、性能的にも、込められた意欲という点でも世界の頂点、日本車としてはこれまでにないクラスのスーパーカーといえるものであった。
プロトタイプ時には「NS-X」とされた名前は「NSX」に改められていた。ちょうどF1でホンダが第二期というべき活躍していたころでもあり、そのデビュウは世界的に大きな話題になった。
なにしろホンダNSXを生産するために、新たな工場をつくってしまった、と聞けばその意欲が伺えよう。それはNSXのボディが画期的なアルミ・モノコックを採用するために、溶接などの設備ともども建設されたもので、大容量の電氣が要ることから変電設備まで備えていた。
もちろんそれはNSXの性能にも大きなメリットをもたらしており、たとえばフェラーリ328GTBの北米仕様に較べて100kg近くの軽量化が果たされ、剛性も遥かに上だった、という。
デビュウ時のエンジンはホンダ・レジェンドに使われていたV6エンジンを高度にチューニングアップ。V6DOHC2977ccというスペック、もちろんホンダお得意のVTECで武装している。当初はSOHCで計画されていたといわれ、DOHCになったおかげでホイールべースも長くされたことが、議論になったりした。
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