自動車デザインは美しさの追及だけでなく、機能性も併せ持ち、そしてクルマのキャラクターに即したものでないとならない。
非常に難しいものだが、ここにある種の法則があることに気付いた。それが「丸」か「角」かということ。丸みを帯びたデザインが優勢だった時代、そしてその逆もある。では果たして今はどちらなのだろうか?
かつて日産でデザインの最高責任者を務めた中村史郎氏に聞いてみた。
話:中村史郎/写真:ベストカー編集部、池之平昌信
ベストカー2018年8月10日号
■「クルマのデザイナーにトレンドを気にする人はいない」
これからのクルマのデザイントレンドは、丸か角か?
そういえば、そんな視点でクルマのデザインを語っていたことがありましたね。なんか懐かしい感じがします。
でも、現在ではクルマのデザイントレンドとして丸とか角とかという切り口で語ることには意味がないですね。
そもそもクルマをデザインするのに、トレンドを気にしているデザイナーはいません。今は、ブランドや新技術を軸としてデザインをしているからです。
ではなぜ、以前はクルマのデザインを「丸」とか「角」とかで語っていたのか? ということですが、それにはいくつかの理由があります。
確かにかつては、丸いデザインの時代、直線的なデザインの時代がありました。
1950年代、1960年代のクルマは、みんな丸みを帯びたモデルばかりでした。それ1970年代になると四角いデザインのクルマが増えてきました。
イタリアのジウジアーロがデザインしたVWの初代ゴルフをはじめとした直線的なフォルムのクルマです。1960年代のオーガニックな形から、1970年ごろから幾何学的な形態に移行したのです。
そして、1980年代になると、空力がデザインのなかで重要な要素になりました。実際にCd値を小さくするだけでなく、見た目にも空力がよさそうに見せるために、いわゆるエアロルックデザインが出てきたのです。
このような経緯があったため、当時はこれからのクルマのデザインは「丸なのか?」「角なのか?」ということが語られたわけです。でも、デザイントレンドにおける丸と角の話はそこで終わりました。
昔は今と違ってボディタイプがセダンとハッチバックくらいで種類が少なかったですから、丸とか角というシンプルな切り口でクルマのデザインを語れたのも理由のひとつだと思います。
ところで、実際には空力がいいクルマのデザイン=丸みのあるデザインではありません。
例えば、日産GT─Rのように、空力に極めて優れていますが、四角いデザインのクルマもあります。ちなみにGT─Rは「四角いハコ」が原点です。
■「ブランドの表現として四角く、というのはあります」
近年はブランドを軸にデザインをしているためブランドの表現として、このクルマは四角く、あるいは丸くあるべきというのはあります。
でもそれはトレンドではありません。
ブランドというのは、トヨタとか日産といったメーカーごとのブランドだけでなく、モデルごとのブランドもあります。
例えば最近出たジムニーですが、ジムニーはオフロードでタフという一貫したイメージがあるからずっと四角くしてるのだと思います。
いっぽうで、軽自動車などには丸みのある形のモデルがありますが、これもかわいらしさの表現としてそうしているわけです。
クルマをどういうイメージにしたいのか? その表現手法として、丸かったり、四角かったり、どちらもありということです。
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