マイアミGPのメルセデスW13は好発進。金曜日のプラクティスではポーポシングの発生が少なくスピードもあった。ラッセルは金曜日のトップタイムも記録している。この結果から “ついにメルセデスの復活”を思わせたのだが……、予選、決勝ではいつものW13になってしまった。プラクティスで他チームとはメニューが違ったとしても、ラッセルの出した29秒台は驚速だ。これはどういうことなのか元F1メカニックの津川哲夫氏が解説する。
文/津川哲夫
写真/Ferrari,Mercedes,Redbull,Alfa Romeo
メルセデスが施したマイアミ・アップデートとは
フロントウイング、リアウイングそしてビームウイング等、フロア上方のアッパーボディーワークのエアロアップデートがメインに行われた。
今回の開発は床下のベンチュリー効果とアッパーボディーエアロ双方のダウンフォースの発生バランスの変更だ。トップスピードと高速コーナーを狙ったロードラッグ型と言うよりも、エアロ効率を向上させ、フロア下面のベンチュリー効果を必要最小限に抑えつつ、必要なダウンフォースを前と後、そしてビームウイング等で効率良く得ようとしたものだろう。これで僅かでもライドハイトの自由度を得ようとしているのではないだろうか。
必要なダウンフォースをアッパーボディーワークに振って、床下ベンチュリーからのダウンフォース率を縮小すれば、ライドハイトの設定に僅かだが自由度ができた。これなら今シーズン開幕戦から苦しめられてきたポーポシング(バウンシング)の制御にもつながるはずだ。
結果的に金曜日のプラクティスではポーポシングの発生は少ないように見えたしスピードも得て、ラッセルは金曜日のトップタイムも記録している。一瞬この金曜日の走りと結果から “ついにメルセデスの復活”を思わせたのだが……。
プラクティスでは速さがあったW13だが予選では失速
いざ土曜日になると状況は大きく変り、大きなポーポシングが舞い戻り、コーナーでもグリップレベルが低く滑りやすく、ドライバーに多くのステアリング修正を要求していた。これは過去4戦と似た状態に舞い戻ったということで、タイムもいまいち。予選ではハミルトンが何とかポールのルクレールから0.83秒遅れの6番手に入るも、ラッセルは纏まらず、P2で出したトップタイムにも届かずに12番手に沈みQ3へ進む事が出来なかった。
ではメルセデスの金曜日の好調さはなんだったのだろうか?
もちろんP3にはレースセッティングを念頭に置いてのセッティングがなされる。つまりイニシャルセッティングは燃料積載量を上げてのセッティングとなり、そのセッティングで予選に向かわねばならないのだ。現実にはレーススタートでは100kg近くの燃料が搭載されるわけで、その重さに耐えうるセッティングをしなければならない。
おそらくメルセデスは軽量のセッティングで、今回のアップデートによるW13の基本パフォーマンスを見つけ出したかったのだろう。
P1・P2では軽い分、重量による車高変化は少なく、結果としてポーポシングの絶対量も減り、安定したダウンフォースも確保され好タイムが計測されたと推測出来る。
メルセデスの求めた事は、今回のアップデートでW13の持つ基本的なパフォーマンスの確認と、ポーポシング等のウィークポイントの洗い出しと、その理解が主目的に置かれ、バルセロナで投入予定の大型アップデートの指針としたかったのかもしれない。
フルタンクで重く、上下への慣性が大きくなると、ポーポシングはこれまでの様に大きく発生するものの、そのポーポシングはエアロポーポシングを含む総合的なバウンシング発生の原理が見えてきたのではないだろうか。この対処には18インチタイヤのサスペンション効果への理解、サスペンション機構とサスペンションジオメトリーへの再考などが含まれているはずだ。
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