パーキングブレーキの正しい使い方と「電動」普及で見過ごしがちな要注意点

パーキングブレーキの正しい使い方と「電動」普及で見過ごしがちな要注意点

 昨今の新型車では、パーキングブレーキは電動パーキングブレーキが主流になっていますが、街を走るクルマの多くは、手引き式や足踏み式のパーキングブレーキ。「普段電動パーキングブレーキのクルマに乗っているけど、社用車やレンタカーで手引き式・足踏み式のパーキングブレーキのクルマに出くわす」ということもあるかと思います。

 ご存じのとおり、電動パーキングブレーキの場合は、多くがエンジンをストップさせると自動でパーキングブレーキが作動するため、ドライバーが操作する必要がありません。それに慣れてしまったドライバーが、電動パーキングブレーキではないクルマに乗って、パーキングブレーキを利かせずにクルマを止めてしまったら…。その駐車場所が傾斜のある場所であった場合、大惨事になってしまうことも。

 クルマを駐車する際には他にも、やっておいてほしいことや、よく見かけるけど実はやらないほうがいいこともいくつかあります。クルマを駐車する際の注意点をご紹介します。

文/吉川賢一
アイキャッチ写真/Murat Subatli. – stock.adobe.com
写真/Adobe Stock

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ベテランドライバーほど忘れやすい? 「自然発車」とは

自然発車による人身事故の調査によると、事故はベテランドライバーに多く、人的要因の92%は操作上のミスで発生している 出典:公益財団法人交通事故総合分析センター(Monkey Business. – stock.adobe.com)
自然発車による人身事故の調査によると、事故はベテランドライバーに多く、人的要因の92%は操作上のミスで発生している 出典:公益財団法人交通事故総合分析センター(Monkey Business. – stock.adobe.com)

 クルマが勝手に動きだしてしまうことを「自然発車」といいます。自然発車による事故は、昔よりも件数自体は少なくなりましたが、現在でも起きがちな事故形態のひとつです。

 交通事故の原因調査を行っているITARDA(公益財団法人交通事故総合分析センター)によると、自然発車による人身事故は年間200件と少ないが、死亡事故件数は20件以上発生しており、直近5年間の死亡事故率は11%と、交通事故全体の0.8%に比べて高い、とのこと。

 年齢層別でみると60歳代が一番多く、免許取得経過年数10年以上のベテラン運転者に多いようです。勾配が3%以上の場所で起きると死亡・重傷の重大事故につながりやすく(駐車場でも起きている)、人的要因の92%はブレーキ操作を含む操作上のミス(車両や道路環境が要因となる確率はほぼない)、とのこと。よく運転をしているベテランドライバーほど、考え事や疲れでぼーっとしていると、パーキングブレーキの操作をうっかり忘れてしまう可能性が高いようです。

 自然発車を防ぐため、エンジンオフをしてもタイヤが回転しないよう、AT車であればパーキングレンジに、MT車であれば平地や下り勾配ではリバースに、上り勾配では1速へ入れ、そのうえでパーキングブレーキを利かせます。

 AT車は、Pレンジにしておけば、パーキングブレーキが作動していなくても原則クルマは動きませんが、Pレンジは簡易的にギアを固定している構造なので、何かの衝撃(他車が衝突してきたなど)でその固定が壊れると、クルマは動き出してしまいます。

 宅急便や大型トラックのドライバーは、荷下ろしをする際に必ず輪留めを仕掛けています。過去の重大事故から学んだ教訓として、パーキングブレーキの掛かりが甘くても自然発車することがないよう、徹底してルール化されているのでしょう。

 ちなみに、急勾配の坂道にびっしりと駐車することで有名なサンフランシスコでは、適切なシフトにギアを入れ、パーキングブレーキを利かせたうえで、登りならばハンドルを左へ、下りならば右へ切り、縁石にタイヤをぶつけてクルマを止めます(右側通行なので、クルマが勾配を下ってしまった際に、縁石にぶつかる方向にタイヤを切っている)。

 別のクルマが衝突してくるなどで、万が一クルマが動き出してしまっても、被害を最小限にできるように、とのことでしょう。現地のドライバーには当たり前に身に付いた、マナーとなっています。

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