ここ最近、スズキが絶好調だ。2018年7月、20年ぶりにフルモデルチェンジした新型ジムニー&ジムニーシエラが爆発的人気となり、2017年12月に発売されたクロスビーも好調で、スイフトスポーツも高評価。スズキの今年4〜6月第1四半期連結決算は、売上高と各利益で過去最高を記録した。
現在のスズキの快進撃は現行ハスラーから始まったとみられるが、なぜ最近スズキ車の評価が高いのか、現行ラインナップを(厳しい評価で名高いレーシングドライバーの松田秀士氏により)一台一台チェックしてもらった。すると、どのモデルにもいい意味での「割り切り」があって、そういうところがスズキの魅力につながっているのか…ということが浮かび上がってきた。
※本稿は2018年9月のものです
文:松田秀士、渡辺陽一郎/写真:中里慎一郎
撮影協力/スズキアリーナ御殿場(電話:0550-83-4773)、河口湖ステラシアター
初出:『ベストカー』 2018年10月10日号
ジムニー
価格:145万8000〜184万1400円
(TEXT:松田秀士)
先代の直近世界販売台数は年間約5万台というから、そんなに売れるクルマではない。だが、新型ジムニーはスズキにしては驚くほどのパワーを投入して開発してきた。
今年7月開催の試乗会で初めて乗り、驚きを禁じ得なかった。超快適とまでは言わないが、軽自動車離れした室内静粛性と気持ちのいい乗り心地。そして、30km/hでコーナリングしても飽きない、楽しくてしょうがないハンドリング。少々寝不足ぎみでの試乗会への参加だったが、ジムニーのステアリングを握ってからは頭の中が活性化し、普段より元気な自分がいた。
どうしてこんなに楽しいのか? その筆頭はステアリングフィールだ。ステアリングダンパーを標準装備している。悪路走行時のステアリングへのキックバック低減と高速走行時の振動を防止する目的で、もともとショップからアフターパーツとして販売され、ヒット商品だったもの。
さすがにメーカーが開発するとデメリットだったニュートラル域の渋さもなく、逆に不思議な楽しいステアリングフィールがある。昔の2輪車にはよく装着されていたからスズキならではの技術。また、ラダーフレームとボディの接合部のボディマウントゴムの上下方向を柔らかく(水平方向を硬く)したことで、なんともいえないフワフワ感。これがまたたまらない快感。
ステアリングはクイックにボディはしっかりと、というセオリーと真逆のセットアップ。つまり、長時間悪路走行でも疲れない。でもオンロードも快走快適。ジムニーユーザーは本当にオフロード走行比率が高いことを考慮。
これはもう明らかにジムニーというブランドです。デザインだけにとらわれないルイヴィトンのような質実剛健。
コックピットに腰かけると、ハマーみたい。エクステリアはゲレンデヴァーゲン? クラムシェルボンネットはレンジローバーのアイコンだったのでは? まぁ、そんなコピー感には目をつぶるとして、FRレイアウトでエンジン縦置き。2WDモードの後輪駆動で走る時の動物的ハンドリング。やめられない、止まらない楽しさがある。
松田秀士の採点…95点
スイフトスポーツ
価格:183万6000〜205万920円
(TEXT:松田秀士)
スズキ社員と名刺交換すると、そのあまりの紙の薄さに仰天するが、クルマに乗ればテレビCMをする予算を商品作りに投入した、みたいな真摯な姿勢と解釈している。
スイフトスポーツの車両価格を知ると、どうしてこんなクルマがこの価格で作れるのか? もしかして赤字出してない? と心配になるくらいだ。スズキのクルマ作りの変革が如実に表われだしたのが2010年に発売された先代3代目スイフトから、とボクは感じる。
サスペンションをしっかりと動かす。バンプ(縮み)も、特にリバンプ(伸び)も動かしながら、まず安定性が高くそのなかからアジリティ(回頭性)を磨いてゆく。スイフトスポーツはスポーツモデルだがサスは柔らかい。しかし、ショックアブソーバとバンプラバーの制御が優秀で、ピッチングを抑えている。だから乗り心地がいい。ついでに室内静粛性はファミリーモデルのスイフトよりも上。
ジムニー、そしてスイフトスポーツと乗って感じるのはスズキは欧州車を含めたどこのメーカーをもベンチマークとしていない独立独歩。餅は餅屋に任せてレカロシートを採用。が、それ以外では徹底的にコストを削りながらもこのクォリティ。誰の真似もしない潔さがスズキを変えた。
松田秀士の採点…90点
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