新車のカタログでもよく目にする「寒冷地仕様」は、文字どおり冬場の寒冷地でも不便なく車を使えるよう対策された仕様として、古くから様々な車に設定されている。北海道などでは寒冷地仕様を「標準装備」としているメーカーが多く、雪国のユーザーにとってはお馴染みの装備だ。
ただ、寒冷地仕様について、日ごろ意識するケースはそう多くなく、「多少バッテリー容量がアップしている程度で普通の車とさほど変わらないのでは?」という漠然としたイメージもある。
しかし、実はこの寒冷地仕様車、意外なほど“普通の車”と異なる専用装備を多岐にわたって採用していて、メーカーや車種によってもかなり違いがあるのだ。
文:永田恵一
写真:NISSAN、TOYOTA、Honda、編集部
寒冷地仕様の「中身」 は? カローラスポーツで解説
まずは標準的な車を例にするため、2018年登場のミドルクラスハッチバック、トヨタ カローラスポーツにおける「違い」を紹介したい。以下のとおり「寒冷地仕様」では、思った以上に様々な部分が標準仕様と差別化されている。
・冷却水の濃度アップ/冷却水に水と混ぜるLLC(ロングライフクーラント)の濃度は、多くの標準仕様で30%で、これだとマイナス15℃程度で凍結し、最悪缶ビールを凍らせたようにラジエーターが破裂する恐れがある。これを防ぐために寒冷地仕様ではLLCの濃度を50%に高め、冷却水をマイナス35℃まで凍結しないよう対策している。
・フロントに電気式補助ヒーターを追加/寒冷地では水温が上がるまでの時間も長いこともあり、エンジンが付く車では冷却水を熱源に使う通常のヒーターだけでなく、即熱性があり短時間で暖房が効く「電気式補助ヒーター」を加え、厳しい寒さに対応。
・リアヒーターダクト/リアシート乗員のため足元に温風を送るためのダクトを追加。
・スターター(セルモーター)/カローラスポーツには1.8Lハイブリッド車と1.2Lターボエンジン車があり、後者ではスターター容量を上げ、寒冷地でのエンジン始動性を向上。
・ステアリングヒーター(寒冷地仕様にオプション設定)/ステアリングの円周が素早く温まり、寒冷地では非常に有難い装備。
・ウインドシールドデアイサー(タイマー付)/雪だまりや凍結でワイパーが動かなくなるのを防ぐために、フロントガラスに熱線が付く。寒冷地以外でも駐車中凍ってしまったフロントガラスの氷を早く溶かしたいという時などに大変便利な装備。
・ウォッシャータンクの容量アップ/寒冷地ではウォッシャーを使う機会も多いのに対応し、ウォッシャータンクの容量を2.5Lから4.8Lに拡大。
この他、寒冷地仕様を選ぶと降雪時の後続車からの視認性アップのためLEDリアフォグランプが、メーカーオプションで選択可能となり(1万800円)、ワイパーブレードは雪が凍り付いて機能が低下するのを防ぐために特殊合成ゴムで覆い、寒さによる固着を防ぐウインターブレードの装着が推奨されている。
まだまだある!寒冷地仕様の独自装備
その他、トヨタ車から寒冷地仕様に付く専用装備を挙げると以下のとおり。
・ストーンプロテクター(飛び石や雪の塊によるボディのキズを防止するためのフィルムテープ)
・リアへの牽引フックの追加(プロボックスで採用)
・ドアミラーヒーター(ドアミラーの画面を暖め、雪や水滴を落とし後方視界を確保。雨の日にも便利なので、寒冷地仕様でなくとも欲しい装備の1つ)
・バッテリーの容量アップ(セルモーターだけでなく熱線などでも電気の消費が多い寒冷地に対応)
・ワイパーのモーターの強化(雪の重さに対応)
・シートヒーター
・ウォッシャー液レベルウォーニング(液残量が僅かになった際にメーター内に表示)
・ウォッシャー液の濃度アップ(凍結防止)
・リアワイパーの追加(セダンの場合)
・フロントフェンダーサイドパネルプロテクタ(86に採用、フロントフェンダーとボディの隙間をシールし、寒冷地でのドアヒンジの凍結を防止。ドアの開閉のしやすさを確保)
・排気熱回収機(アクアに採用、捨てていた排気熱も使って冷却水を暖め、暖機を促進)
・ヘッドライトウォッシャー(レクサスRCに採用、熱が出ないLEDヘッドライトに対応)
このように、車種によってもその中身は多岐にわたり、寒冷地仕様には非常に様々な装備が追加されていることがわかる。
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