「一目惚れするデザイン」と「虜にさせる走り」を魅力とする新型プリウス。しかし、開発チームが狙う新型プリウスの魅力はもうひとつある。「愛車として長くご愛用いただけるクルマにしたい」ということだ。
もちろん、デザインがよく、走りもよいとなれば、愛車として長く乗り続けられるようにも思うが、開発チームが目指した「愛」には、もう少し深い理由がある。それは、「プリウス」が再び「先駆け」としてトライし始めた、とある仕掛けであった。
文:吉川賢一
写真:TOYOTA、NISSAN
安全性能の制御のアップデートやバージョンアップが可能に
新型プリウスの「長く乗り続けられる仕組み」とは、サブスクリプションサービス「KINTO Unlimited」のことだ。KINTOで契約したクルマに、後から少しずつ最新技術の装備(ソフトウェアやハードウェア)をアップデートやバージョンアップしていくことで、長く一台を使い続けてもらい、クルマに愛着をもってもらう、ということが狙いだ。
ソフトウェアのアップデートやバージョンアップはOTA(Over The Air)によって行われる。OTAによるアップデートやバージョンアップは、日産車やホンダ車でも行われており、よく行われるのは地図データの更新だが、筆者の所有するノートオーラでは、2022年6月に「乗る前エアコン」機能がOTAで配布され、出かける前にスマホでクルマのエアコンをつけることができるようになった。日産コネクト利用年会費として7,920円を支払う必要があるが、それだけ払う価値があったと感じており、まさに「神バージョンアップ」だと感じている。
ただ「KINTO Unlimited」では、被害軽減ブレーキのような安全性能に関する超重要な制御までも、OTAでアップデートやバージョンアップ対応できるようになるという。歩行者や自転車の飛び出し(子供やペットの飛び出しなどできるとよいが)など、今は備わっていない、新たな安全検知技術のプログラムまで書き換え可能にするとは、さぞかし大変だっただろう。
なんと、ハードウェアの追加も可能に
さらにこの「KINTO Unlimited」では、ハードウェアの追加もできるようになるという。車両契約時に選択しなかったメーカーオプション、例えばBSM(ブラインドスポットモニター)やステアリングヒーターなどを、後付けで装着できるようになるというのだ(KINTO契約中に寒地へ転勤になった場合などを想定している)。わざわざクルマを買い替えることなく、最初は諦めた機能も欲しくなったら(種類は限られるが)後で追加できるので、長くクルマを使ってもらえる、という狙いだ。ただし、ハードウェアの更新は有料となる見込みだ。
開発担当によると、カメラやセンサーといったハードウェアを追加で装着するため、新型プリウスでは、事前にハーネスを通しておく「アップグレードレディ設計」を、トヨタで初めて整備したという。従来、こうしたハードウェアの装着には何時間もかかっていたが、その大半を短縮できるようになるそうだ(ブラインドスポットモニターの場合だと13時間かかっていた作業時間を3時間程度に短縮)。ただし今回の新型プリウスでは、どんなにハードウェアをバージョンアップしても、既存の新型プリウスの最上位の性能に追い付くだけでしかなく、さらに上位の性能へと飛躍できる可能性については、説明していない。
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