G7広島サミット開催(2023年5月18~21日)に合わせて、日本自動車工業会(自工会)はさまざまなカーボンニュートラル達成に向けた取り組みをアピールしている。その目玉となるのが「ひろしまゲートパークプラザ」における実車展示だ。なかでもひときわ目立つ存在が、日野の大型トラック「プロフィア」をベースにしたFC大型トラックだ。
文、画像/ベストカーWeb編集部
■FCトラックが国内商用車の「ゲームチェンジャー」に
今回の広島G7サミットで自工会が展示した「FC」、すなわち燃料電池で走る大型トラックは、そもそも飲料メーカーであるアサヒグループ、西濃運輸、ヤマト運輸、トヨタが、実際に物流業務に使う実証実験を始めたものだ。今後、東京や神奈川、北関東や愛知県で走っている姿をご覧になるかもしれない。
トラックの「電動化」(≒カーボンニュートラル化)は、2tクラスこそEVもあるが、その上のクラスとなると総重量が重くなりすぎるため、「FCトラック」が有望視されている。
このクルマを企画したのがCJPT(コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ)だ。CJPTはトヨタ、いすゞ、日野、スズキ、ダイハツが輸送面でのカーボンニュートラルの実現を目指して作った共同出資会社で、社長はトヨタ自動車の商品担当副社長である中嶋裕樹氏が務める(なお日野自動車は2022年8月に発覚した認証不正問題でCJPTから除名措置を受けており、今回展示されたプロフィアのフロントにある「日野」マークは「CJPT」マークになっていた)。
「競合」よりも「協調」を優先し、横断的に知恵を出し合う体制が取られていて、先日発表されたハイゼットベースの軽EVバンもCJPTが企画したものだ。
さてこのFCトラック、見た目は普通の大型トラックだが、心臓部と言えるFCスタックはトヨタ製で、大容量高圧タンク6本に水素を最大50㎏積み、2つのモーターで駆動する。最高出力は260kW(約350ps)で、加速のよさはディーゼルとケタ違い。「ディーゼルと比較にならない気持ちよさ」(開発者)という。もちろんモーター音しかしないから、ドライバーのストレス軽減という点も期待できる。
なお最大航続距離は約600kmと、ディーゼルエンジン車の燃料満タン時に比べるとやや劣る。ただし、水素の充填を2つの充填口を持つツイン方式とすることで、満充填に約10分とディーゼルトラックが軽油を満タンにするのとほぼ同じ時間まで短縮できた。これはスーパー耐久レースに参戦し、モリゾウさんも運転する水素エンジンカローラの充填技術を生かしたものだ。
モーターの特性上、長い上り坂などではパワーが落ちるため、冷却効果を高めることが課題だといい、また水素タンクを積載するため、荷台の長さが若干短くなることがお客さんにどう捉えられるかなど心配な点もある。しかし約600kmという航続距離は都道府県間の輸送ならしっかり対応できるということ。
「国内の商用車が出すCO2のうち約7割を大型トラックが排出している」という現実を考えると、FC大型トラックの普及はカーボンニュートラルへの道のりに欠かせず、このFCトラックが難関へ向けた「ゲームチェンジャー」になるかもしれない。
コメント
コメントの使い方水素ステーションが日本全国にどれだけあるのですか。使い切った後は只の
鉄の塊です。ガソリンなら何処でも手に入ります。不要の極めです。