今シーズンの全日本ラリーで6月の丹後ラリーから実戦投入されることになった現行型WRX S4ベースのマシン。初の直噴ターボ、FA24ターボはこれまでのEJ20ターボを超えることができるのか?
文/ベストカーWeb編集部・渡邊龍生、写真/西尾タクト
■かのEJ20ターボをFA24ターボが上回ることは可能か?
長らくスバルの競技用車両パワーユニットとして名声を博した水平対向4気筒2LのEJ20ターボ。市販車では1989年に登場した初代レガシィを皮切りに、初代インプレッサWRX、2代目(GDB型)&3代目(GRB型&GVB型)インプレッサWRX STI、そして先代VAB型WRX STIなど歴代スバルラリーウェポンの心臓部として名を馳せた名機だ。
今回、2023年6月9日からの全日本ラリー第5選丹後に現行型WRX S4ベースのニューマシンが急遽投入されることになったというのは既報のとおり。先だって開催された2023年のニュルブルクリンク24時間レースにはこの現行型WRX S4ベースのマシンで出走したが、クラス2位という成績に終わっている。
2008年、当時の3代目GRB型WRX STIベースのWRカーで参戦していたWRC(エースドライバーは2003年のWRCドライバーズチャンピオンを獲得したペター・ソルベルグ)を撤退したスバルは同年以後、WRX STIでの参戦レースの舞台をニュルブルク24時間レースに切り替えていたことは皆さんもご存じのとおり。
■ドライバーのふたりはどう評価しているのか?
レースの主戦場をWRCからニュル24時間に切り替え、クラス優勝を果たしてきた歴代WRX STIだったが、以降も全日本ラリーではWRX STIベースのマシンが出走。今回からスバルがチーム運営に組み込んだふたりのラリースト、新井敏弘選手と鎌田卓麻選手のマシンも同様だった。
だが、今回のスバルとSTIによる「SUBARU RALLY CHALLENGE」チームとして、新井選手と鎌田選手の運営と車両開発のサポートを行う体制に伴い、今シーズンは新型マシン、現行型WRX S4ベースの「SUBARU WRX CHALLENGE 2023」が急遽、クローズアップされることに。
従来までのVAB型WRX STIからの変更点は多いのだが、やはり最も注目されるのは実績のあるEJ20ターボから初の直噴ターボとなるFA24ターボに切り替わったことだろう。実際に新型ラリーカーをドライブしたふたりの意見を聞いてみた。
まずは新井選手。「今度のFA24ターボは制御がこれまでのEJ20ターボと比べて違うのでレスポンスがいい。この先、煮詰めていくとどの程度パワーが出せるのかはわからないけど、量産型のエンジニアがこのあたりは頑張ってくれている。まだまだパワー的には余裕がありそうなんだよね。個人的にはスペック的には上だった同じ直噴のFA20ターボよりマージンはあると思う。楽しみだよね」と好感触だったという。
また、鎌田選手は「すべてにおいてレスポンスがいい。アンチラグはあるけどEJは無理くりタービンを回さないと初速が出ないエンジンだったのに、レスポンス的には弱かった。上は高回転まで回ったけど、下の低回転でのトルクが弱かったんです。でも、FA24ターボになって低速でのアクセルのつきが抜群によくなった。これまでは量産型のポテンシャルをいかに上げるかってことに開発は注力していたけど、どうしてもタイヤ4本のうち一輪ずつの仕事量が多くならざるを得なかった。今回はボディがSGP+フルインナー採用により、タイヤ一輪への負担がより減って少ないグリップで多く曲がれる。それとサスペンションジオメトリーを変えた足もかなりいいですよ。見た目は市販車のWRX S4ですけど、まんまラリーマシンです」と太鼓判を押す。
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