去年の夏、『トップガン マーヴェリック』で世界中を熱くしたばかりのトム・クルーズが今夏、またも世界中を熱狂させようとしている。1996年から続く大人気のスパイアクション・シリーズ『ミッション:インポッシブル』の最新作にして7作目『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』が本日公開となった!!
文/渡辺麻紀
(C) 2023 PARAMOUNT PICTURES.
■イーサン・ハントがクルマやバイクのアクションで魅せる
今回、クルーズ扮するイーサン・ハントの使命は世界を変える力を秘めた最新兵器を手に入れること。そのためにはまずふたつのカギを探さなくてはならず、世界中を奔走することになる。
ストーリーは入り組んでいて判りづらい部分もあるのだが、それでもさすが『ミッション』シリーズ。アクションはヴァラエティに富み、そのひとつひとつが手に汗握る迫力。
上映時間は2時間43分とかなりの長尺にもかかわらず、その時間をまったく感じさせない中身の濃い作品になっている。今回はその大充実のアクションを紹介したいと思う。
最初の大きなアクションはローマの市街地で繰り広げられるカーチェイス。イーサンは、手錠で繋がれてしまった今回のヒロイン、凄腕のスリであるグレース(ヘイリー・アトウェル)とともに車を替えながら古都を走り回る。
パトカーを奪って逃走するグレースを警察のバイク(BMW G310 GS)で追うイーサンなのだが、その後、状況が判らない警官によって彼女と手錠で繋がれてしまい、今度はふたりで逃走することになる。
まず乗るのはBMWM5コンペティション。片手が手錠で繋がれたままハンドルを握らなければならないため、いつものイーサンらしいスマートかつスムーズな走りは難しく、あちこちにぶつかってしまい、両方のドアが外れてしまった状態で走行する。
ちなみにクルーズが初めに乗るパトカーもBMW。実際のローマのパトカーはアルファロメロが多いのだが。
■フィアット500がローマ市街を爆走
この車を乗り捨てて、次に選んだ車は何と黄色のフィアット500。そう、あのルパン三世の車と色まで同じなのだ。狭い車内で動きを封じられたふたりが四苦八苦する演出はユーモア度がアップしていて、身体を張ったスラップスティックコメディのようなノリ。
狭い路地を走り抜ける姿は、まるで『ルパン三世』の実写版を観ている感覚だ。このフィアット500、最新の装備を搭載しているものの、外見は使用感いっぱいなため、ますますルパン度もアップ。
監督のクリストファー・マッカリーはアニメの『ルパン三世』を知らないと言っているので偶然なのだろうが、そうは思えないほどルパンしている。
このアクションシーンの撮影は、ローマの中心街に位置するフォーリインペリアーリ通りで行われた。二日間閉鎖して撮影を敢行したというが、この地域で昼間に大がかりな撮影をしたのは本作が初めて。人気のシリーズだからこそ許可が下りたのだろう。
次なるアクションは予告編のときから話題となっていた崖からのバイクジャンプ。走るオリエント急行に乗るため、イーサンがパラシュートを装着してバイクのままジャンプする。
言うまでもなく、実際にやっているのはクルーズ自身。彼はこのアクションを成功させるために1年間、スカイダイビングやパラシュート、モトクロス等の猛特訓にチャレンジ。モトクロスジャンプだけでも1万3000回も訓練したという。
このアクションで使われたCGは、飛び降るために作られたスロープの消去だけというから驚かされる。
イーサンの駆るバイクはホンダのCRF450R。軽量なのに安定性があるから選ばれたという。車もバイクもBMWが多いなかで、もっともデンジャラスなバイクアクションシーンではホンダというのはちょっと嬉しい。
崖からのジャンプを成功させ、暴走するオリエント急行に飛び乗ったイーサンを待っているのは、2本のカギの秘密を握る彼の元同僚。ふたりは、その走る列車の屋根の上で対峙する。
次から次へと近づいて来るトンネルが効果的に使われ、闘っているふたりの頭がぶつかるのではないかというスリルを上手に生み出している。
列車でのアクションはこれに留まらない。車内に入ってからはカギを巡る騙し合いでサスペンスを演出し、陸橋が爆破され車両が数珠つなぎになって転落して行くアクションでMAXのスリルを味わわせる。
車内では椅子やテーブルに加え、グランドピアノまで滑り落ち、それをどうにかかわそうとするイーサンとグレースのまさに手に汗握るアクションの連続。
これまでも転落する列車を扱ったアクションはたくさんあるが、迫力としつこさでは本作がピカイチ。イーサンが落ちるはずはないと判っていてもハラハラドキドキが止まらない!
このシーンはノルウェーの山岳部にある路線を使用し、実際に走る列車を本作のために製作し、実際にそのなかで撮影し、実際に破壊したというから、このシーンでもデジタルは最小限。クルーズの徹底したリアル志向がしっかり反映されている。さすが、というほかないだろう。
タイトルにあるように本作は『PART ONE』。最新兵器を巡る争奪戦の結末は『PART TWO』に持ち越される。またもトム・クルーズ旋風が巻き起こりそうだ。
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