クルマ好きにとって、燃費は単なる節約の指標ではない。いかに少ない燃料で多くの距離を走るかは、あくなき挑戦であり夢なのだ! 同時にスーパーカー的なカッコもクルマ好きの夢! ふたつの夢を同時に実現してくれるのが、燃費スーパーカーなのだ!
※本稿は2023年5月のものです
文/清水草一、鈴木直也、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2023年6月26日号
■初代プリウス登場より受け継がれる「燃費スーパーカー」の系譜
1999年。世界初の量産ハイブリッドカー、トヨタ・プリウスに対抗すべく、2台の燃費スーパーカーが誕生した。
一台は、オールアルミボディに1.2L直噴ディーゼルエンジンを搭載し、100kmを3Lの燃料で走ることを謳ったアウディA2。そしてもう一台は、アルミ製の2シーター超空力ボディに、1.0Lガソリン+モーターのIMA(ハイブリッド)システムを搭載した、ホンダの初代インサイトである。
この2台は、究極の低燃費を目指すため、コストや利便性を無視した燃費スーパーカーだったが、ともに販売は振るわなかった。
ところが今、スーパーカールックの新型プリウス誕生によって、燃費スーパーカーは復活した! 思えば現代は、どこかしらスーパーな要素を持った低燃費車にあふれている。というわけで、それら燃費スーパーカーの列伝をお送りしようじゃないか!
■元祖燃費スーパーカー初代インサイトの思い出
元祖燃費スーパーカーと言えば、ホンダの初代インサイト。その元オーナーである鈴木直也氏と、普通のスーパーカーのマニアである清水草一が、燃費スーパーカーを巡って熱く語り合った!
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清水「1999年に初代インサイトが登場して、世界に衝撃を与えたわけですが(?)、直也さんが手に入れたのは、いつ?」
鈴木「出てすぐじゃなく、2002年なんですよ。1年落ちの、ごく程度のいい中古車でした。出た時からずっと欲しかったんだけど、完全な2シーターでしょう。なかなか踏ん切りがつかなかった。
でもロス在住の友人の愛車に現地で乗せてもらって、やっぱり買うしかないと思ったんです。日本ではMT車の出物が少なくて、探すのに苦労したけどね」
清水「初代プリウスではなく、初代インサイトを買ったのはなぜだったんですか」
鈴木「僕はもともとアルピーヌA110に乗ってたし、コンパクトなスポーツカーが大好きなんですよ。ロータスエランとか」
清水「小さいスーパーカーですね!」
鈴木「初代インサイトは燃費よりもそっちの魅力で、まずビビビッと来た。で、実際に乗り始めたら、燃費アタックの面白さに目覚めたんです。初代プリウスは誰が乗ってもそこそこの燃費を出せたけれど、初代インサイトのMT車はテクの振るいようがある。それで上手く走ればリッター32kmとかね」
清水「僕は当時、ゴリゴリのスーパーカーマニアだったので、実用性のないスーパーカーみたいなカッコで低燃費を出すなんて矛盾だ! って思ったんですよ。でも考えてみたら、実用性のないカッコで速さを狙うのも燃費を狙うのも精神性は同じだな、と。徐々に尊敬の念を抱くようになりました」
鈴木「燃費チャンピオンだけを狙ったクルマだからね。目的がすごく明確だった」
コメント
コメントの使い方> 実用性のないカッコで速さを狙うのも燃費を狙うのも精神性は同じだな、と
なるほどそういう考え方もありますね。同世代には交通を妨げず燃費を伸ばすことを、サーキットタイムを削るかのように楽しんでる人も居ます
そうやって視野を変え、価値を限定化せず生んでいくのも健全で良いことだと思えてきました
そしてスーパーSUVが実用性とカッコの折半のように、これからの燃費性能車も実用と見た目を両立していくんですね