トヨタといえば車種別に専用エンブレムを付けている印象が強かった。しかし、ここ数年出てくるクルマには、見慣れたトヨタマークが付けられ、専用エンブレムを付けたクルマが激減している。トヨタがエンブレムを統一し始めた理由は何なのか。エンブレムがクルマやメーカーに及ぼす影響を考えていきたい。
文/佐々木亘、写真/TOYOTA
■アルファードも専用エンブレム廃止! 共通エンブレムを広める理由とは
2020年5月にトヨタのチャネル別専売が無くなり、全チャネルで共通の車種を販売する形へ切り替えた。以降、車種専用エンブレムは姿を消していく。
ネッツ店専売車に取り付けられていた「N」マークは不要となり廃止。ノア・ヴォクシーもフルモデルチェンジで専用エンブレムから共通のトヨタマークへ変わった。
ハリアーのチュウヒをモチーフにしたデザインや、アルファードの「α」モチーフのエンブレムも、トヨタマークに変わっている。
車種専用エンブレムは、センチュリー・クラウン・カローラーシリーズという、トヨタの歴史を作り上げてきた車種だけに残り、HEVモデルの青色トヨタマークは「HEV」のエンブレムを取り付ける方向へと変わった。
こうした変更は、トヨタが日本でのイメージを大きく変えるためにとった戦略の一つだと筆者は考える。
■専用エンブレムがトヨタを置き去りにしていくのか
専用エンブレムを長く続けてきた結果、トヨタのクルマは個別にネームバリューを高めることができた。クラウン・ハリアー・アルファードなどは、クルマ好きでなくとも、なんとなく良いクルマだなというイメージが沸くはずだ。
こうした専用エンブレムのクルマに乗るオーナーたちに、「乗っているクルマは?」と尋ねると「クラウン」「ハリアー」「アルファード」という車名だけが出てくる。しかし、車名に「トヨタの〇〇」という修飾がない。
車種別に知名度と高級感を高めた結果として、トヨタマークを付けているクルマはベーシックなものとユーザー思っていることを、筆者が販売現場で感じる時期もあった。大きくなりすぎた商品がメーカーの存在を食い始めたのだ。
トヨタのように大きなメーカーが、社内に小さなブランドを複数作り上げるのはよくある話。しかし、結果として各車のブランドが育ちすぎ、トヨタの存在が小さくなってしまったのだ。
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