小型EVトラックの走行距離は、バッテリーの容量にもよるが、40kWhの満充電でざっくり100km程度。
あまり長い距離を走らない宅配などの車両では充分かもしれないが、中・長距離を走るとなると、なんとも心許ない。
まだまだ充電インフラが限られる中で、どうしても出先での「電欠」は防ぎたい。そんな経路充電(経路の途中で行なう充電)に関する実証実験がこのほど福岡で始まった。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/NEC・ENEOS・日本通運
供試車両は日本通運のeキャンター
カーボンニュートラル社会へのシフトに向けた各種取り組みが推進される中、日本国内においてもEVの更なる普及・促進が求められているが、長距離の走行に必要な経路充電可能な充電ステーションの場所が限られており、インフラの普及が課題となっている。
そこで日本電気(NEC)、ENEOS、日本通運の3社は、EVトラック普及拡大に向け、経路充電の有効性の確認および運用方法の確立を目的とした実証実験をこの9月5日から福岡県内で開始した。
供試車両は、日本通運の福岡支店に導入されている三菱ふそうの「eキャンター」(第2世代モデル)である。
ちなみに日本通運グループは、「気候変動への取り組み」を重要課題(マテリアリティ)の一つと位置づけ、CO2排出量を2023年度までに2013年度比30%削減の目標を掲げている。
2022年7月にはCJPT社が主催するエネルギーマネジメントシステムの構築・社会実装に参画し、2030年までにカーボンニュートラル車両(燃料電池トラック)23台の導入を計画するなどの取り組みを進めている。
また、今回の供試車両にもなったEVトラック「eキャンター」は、2022年12月に横浜支店と、福岡支店に2台を配備。さらに2023年内に10台の導入を予定し、近距離の引越しや配送業務などで活用する予定である。
実証実験の目的は?
今回の実証実験の概要だが、期間は2023年9月5日より1カ月間。場所はENEOSのDr.Driveセルフ水城店(福岡県太宰府市) 。
検証項目は、
1. EVトラックの長距離輸送における経路充電の有効性
2. EV運用支援アプリケーションの必要機能および有効性=出発地から配送先へのルート検索や電気消費量シミュレーション、シミュレーションを踏まえた充電ステーションの検索、ドライバーへのバッテリー切れリスクの通知など
3. SSの充電サービス設計要件
となっている。
この実証実験を踏まえ、NECは、日本通運のEVトラックの実運行データを活用し開発したシミュレーションロジックを起点とするEV運用支援アプリケーションの価値向上を目指す。
またENEOSは、実証を皮切りにEVトラックユーザーの充電ニーズに応じた経路充電ネットワークの拡充を図るとしている。
さらに日本通運は、EVトラックの運行データを活用することで、EVトラックなどの環境配慮車両の導入を積極的に進め、顧客のサプライチェーン全体を通じて環境負荷の少ない物流を提案していくとしている
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