近年、さまざまな分野で、昔懐かしきものや、昭和レトロといったものが再注目され、若い世代に人気を得ている。言葉を変えれば、“先祖返り”とも言えるのではないだろうか。その傾向は、自動車業界でも見られるという。そこで今回は、“原点回帰”をテーマとする、ランドクルーザー250を題材に、クルマデザインの大先祖返りの兆しを考察していく。
文/清水草一、写真/TOYOTA
■テーマは原点回帰! ランドクルーザー250のヘッドライトは丸目と角目の2種類を用意!!
「テーマは“原点回帰”です。ランドクルーザーを自然に具現化するとこうなった、と考えてください。当然今の新しいテクノロジーを盛り込みながら、スマートなデザインをしています。奇をてらわずに。これが今回の250でした」
ランクルプラド改めランクル250のデザイン責任者である渡辺義人主査は、発表会でそう語った。
原点とは、1960年から1984年まで作られたランクル40(ヨンマル)を指すという。第二次大戦で大活躍したウィリス・ジープを手本に作られたオフロード4WDだ。
ルックスもジープ直系で、ヘッドライトは当然丸目だった。当時ヘッドライトは丸形しか存在しなかったのだから当たり前である。
ランクル250は当初、四角い小型LEDを三つ並べた角形ヘッドライトでデザインが進められていたが、「丸目もいいよね」ということになり、LEDを円環状に配した丸型ヘッドランプがラインナップに加わった。角目と丸目は、購入後に交換も可能だという。
■懐かしさを感じてしまうランドクルーザー250にある魅力とはなにか
2023年の今、ランクル250の角目と丸目を見比べると、どちらにもノスタルジーを感じずにはいられない。
当初案の角目は、1970年代後半から80年代にかけて、さまざまなクルマに採用された角目のクルマたちを彷彿とさせる。その基本形は、1974年にアメリカでSAE規格となった角形ヘッドライトだ。
角形ヘッドライトは当時の最先端で、いすゞの名車・117クーペも、77年に丸形から角形に変更されている。
今見ると、オリジナルの丸形のほうが断然カッコよく感じるが、中高年世代にとっては、角形は角形で青年期の熱い思いが詰まっており、懐かしいのである。
丸目はさらに懐かしいことは言うまでもない。自動車発祥から1970年代まで、あらゆるクルマが丸目だった。丸目というだけで即、クラシックを連想させる。
ちなみにSAE規格の丸型/角形ヘッドライトは、アメリカでは1984年までどちらかの使用が義務付けられており、それらを使った上で空気抵抗を減らすために、リトラクタブルヘッドライトが考案されたという経緯があったりもする。
小径のLEDヘッドライトが標準的になった現在は、丸目や角目にする機能的な理由は皆無。採用する目的はただひとつ、ノスタルジックな雰囲気だけだ。
ランクル250のデザインは、ボディもシンプルな直線基調でノスタルジック感が強い。これはまさに善き原点回帰! ゾクゾクするほど魅力的だ。
ランクルプラド系の歴史を振り返ると、1984年に登場した「ランドクルーザーワゴン」は、40系に通じる丸目+直線基調のジープタイプだった。
1990年登場の初代プラドは角目+直線基調となり、96年の2代目はパジェロ風エアロボディの丸目/角目に。3代目、4代目は現代的な異形ヘッドライトを持つ、ごく真っ当なSUVスタイルとなった。
ランクル250のデザインには、ランクル40系よりも、ランドクルーザーワゴンや初代ランクルプラドへの回帰を強く感じる。そしてそれは、間違いなく「カッコイイ」ことなのである。
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