なぜ軽油はレギュラーより安い?? ガソリン高騰で気になるカラクリ

なぜ軽油はレギュラーより安い?? ガソリン高騰で気になるカラクリ

 史上最多の10連休となった今年のGW。連休前後に給油をして、ガソリン価格の高さが気になったユーザーも多いのではないだろうか。

「ガソリン価格が高い」と感じるのも当然で、資源エネルギー庁が実施している給油所小売価格調査によると、実は11週連続でガソリン価格は値上がりしている。

 そうした状況下でもレギュラーガソリンに対して1Lあたり約20円も安いのが、ディーゼル車の燃料に使われる「軽油」だ。なぜ軽油は安いのか? 改めてそのカラクリを解説したい。

文:大音安弘
写真:編集部、Adobe Stock


本当は軽油のが高い!? それでもレギュラーより安くなる理由

レギュラーガソリンに対して安い軽油。地域やスタンド毎に差はあるもの、全国平均では1Lあたり20円ほど安くなっている

 現在のガソリン価格高騰の要因は、米国とイランの対立などによる産油国の情勢不安で原油の供給量が減少していることが挙げられている。

 ただ、米国のトランプ大統領がOPECに原油価格引き下げを要求したことや中国への更なる追加関税の実施を発表したことなどが、今後の原油価格にどのように影響を与えるかに注目が集まる。

■油種ごとの給油所小売り価格の違い
【2019年5月7日】
レギュラー:150.2円(+7.3円)
ハイオク: 161.0円(+7.3円)
軽油:130.7円(+6.5円)

【2019年2月12日 ※値上がり前の価格】
レギュラー:142.9円
ハイオク:153.7円
軽油:124.2円

(資源エネルギー庁発表、全国平均1L当たりの税込価格)

 燃料価格が高騰すると、気になるのが燃料による価格差だ。

 ガソリン同士だと、レギュラーとハイオクの価格差は、概ね10円程度だが、レギュラーガソリンと軽油を比較すると、その差は20円前後まで拡大する。なぜガソリンと軽油の価格差が、ここまで開くのだろうか。

 そもそも燃料には、燃料そのものの価格に税金が加算されている。ガソリンの場合、揮発油税(48円60銭/L)と地方揮発油税(5円20銭)を合わせた、通称「ガソリン税」と呼ばれる税金が、1Lあたり53円80銭加算されている。

 では、ガソリンの価格からガソリン税を引いたものが、本来のガソリン価格になるかといえば、然に非ず……。不思議なことに、ガソリン価格とガソリン税を合わせた金額に、消費税がかけられているのだ。これがいわゆる“二重課税”といわれるものである。

 この点は難しいのだが、ガソリン税の納税者が石油会社となるため、商品価格のコストの一部という判断になるようだ。

 一方、軽油には、「軽油引取税」の32円10銭が加算されるが、消費税は軽油のみを課税対象としている。その結果、ガソリンと軽油には、税金だけで21円70銭もの価格差が生じているのだ。

(例えば、店頭価格をレギュラー:150円、軽油:130円として計算すると……

レギュラー:店頭価格150円-税金53.8円=本体価格96.2円
軽油:店頭価格130円-税金32.1円=本体価格97.9円

となる)

 税引き後は、レギュラーガソリンと軽油の値段が逆転するのは、意外な事実といえよう。

 ちなみに、ガソリン税は「地方揮発油税」を含めて国税となり、軽油引取税は地方税となる。このため、軽油は基本的には、地元で給油すると都道府県の税収となる。

 ただ、ガソリン税と軽油引取税ともに“暫定税率”が適用され、本来の課税額よりも上乗せされている。これには期間が設けられているが、期限切れを迎えても延長措置が取られ続けているのが実態だ。

[※編注:二重課税は問答無用で大問題だが、この燃料への高額な課税も非常に重要な話。交通網が発達した都心ならまだしも、公共交通機関が続々と撤退している地方では自家用車はライフラインであり、その燃料費の単価の1/3以上が税金というのは明らかに問題だ。 

 政治家や中央省庁の皆さんには、いまだに「自動車は贅沢品、所有者は全員富裕層」という誤った思い込みが強いと言わざるをえない]

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