1989年にトヨタの上級車ブランド「レクサス」が北米で立ち上げられてから、2019年で30年が経過。2005年の日本国内開業からも14年を経た。
レクサスが日本で開業するまでの16年間、日本国内ではレクサス GSが「アリスト」として、レクサス ISも初代は「アルテッツァ」として販売。最上級セダンのレクサス LSも、当初は「セルシオ」として販売され、4代目から国内でもレクサス LSとして扱われるようになった。
このように、もともとトヨタ車だったモデルが、“レクサスの車”になったことで得たモノ、失ったモノは、それぞれ何だったのか? 3台の例を題材に、自動車評論家の渡辺陽一郎氏が解説する。
文:渡辺陽一郎/写真:編集部、TOYOTA
アリストやセルシオがレクサス化でサイズ拡大
レクサス GS、IS、LSのすべてに当てはまることは、アリスト/アルテッツァ/セルシオとして売られたトヨタブランド時代に比べて、海外指向を強めたことだ。
最もわかりやすいのはボディサイズだろう。
初代と2代目アリストの全幅は1800mm以下だったが、レクサスGSにフルモデルチェンジすると1820mm、現行型のGSは1840mmに広がった。
セルシオは、最終型となる3代目の全長が4995mm、全幅は1830mmだったが、LSに変わると同5030mm・1875mmに拡大された。さらに現行型のLSは5235mm・1900mmに達した。
レクサスの販売店によると「先代LSのお客様から『現行LSは車庫に収まらない』という不満が生じている。そのためにLSからESに乗り替えるお客様が増えた。
ESはLSと同等に車内が広く、ボディは少しコンパクトだから車庫入れもしやすい。LSは後輪駆動、ESは前輪駆動だが、この違いにこだわるお客様は少ない」とのことだ。
このようなボディの拡大と取りまわし性の悪化は、トヨタブランドからレクサスに変わって失われた機能の代表だろう。
アルテッツァはレクサス化で売れ行きにも「変化」
デザインも同様だ。
トヨタブランド時代は14年以上も前だから今と直接比較しにくいが、アルテッツァは日本のユーザーにとって馴染みやすいバランスの取れたデザインだった。
これが2005年に国内発売された先代レクサスIS、さらに現行ISになると、かなり個性的でアクの強いボディスタイルになっている。
トヨタブランドからレクサスへの移行に伴い、売れ行きも変化した。1998年に発売されたアルテッツァは、翌年の1999年に約3万4000台を登録した。
ところが2005年に登場したレクサス ISは、翌年の2006年に約1万2000台しか登録されていない。
1999年と2006年では国内の市場規模が異なり、1999年の586万台から2006年には574万台に2%ほど減った。
それでもISの売れ行きは、アルテッツァの35%(65%減)だから大幅に低迷している。トヨタブランドからレクサスに移行したことによる販売下落は大きい。
背景には販売店の店舗数も影響した。アルテッツァはネッツトヨタ店が扱ったから、国内では約1600箇所の販売網がある。
一方、レクサスは開業当初も今も170店舗前後だから、販売網は約10%まで激減した。レクサスには1県に1店舗しかない地域も多く、購入したくても買えない現実がある。
つまり、レクサスISは、トヨタブランドのアルテッツァに比べると、デザインなども含めてクルマ作りが日本のユーザーから離れた。なおかつ店舗数も激減して、売れ行きを下げている。
どこの地域でも公平に購入できて、点検などの際にも、親切な接客を受けられるトヨタの特徴を欠いてはならない。
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