レクサスを開業したトヨタの「事情」
ちなみに、かつて北米などではトヨタブランドのサービスも、国内ほど充実していなかった。そこで海外のレクサスは、どこでも親切なサービスを受けられて点検の納期も守るなど、「日本国内のトヨタの常識」を持ち込んで成功した。
つまり、海外のレクサスは日本のトヨタを手本にしているから、日本でレクサスを展開するメリットはなかったといえるだろう。
それでも日本にレクサスを設けた背景には、メルセデスベンツやBMWといった欧州プレミアムブランドの台頭があった。
クラウンなどトヨタのセダンから、欧州車への代替えが進み、これに歯止めを掛けるにはプレミアムブランドで対抗すべきと考えた。
海外では日産もインフィニティ、ホンダはアキュラというプレミアムブランドを展開するが、これを国内で開業しないのは、トヨタに比べるとセダンへの依存度が低く、欧州プレミアムブランドに流出するユーザーの数も少ないからだ。
つまり、国内でレクサスを開業したのは「トヨタの事情」に基づき、日本のユーザー本位ではなかったともいえる。だからアルテッツァからISになって売れ行きが激減した。
レクサス化で得たメリットと目指すべきクルマ作りは?
それでも国内で売られるトヨタブランド車の一部が、海外と同じレクサスブランド車になったメリットもある。それは主に走りの進化だ。走行安定性と乗り心地については、メルセデスベンツやBMWと同等とはいえないが、以前に比べると向上した。
運転感覚では、操舵に対する反応の仕方も個性的だ。例えばRC350 FスポーツのLDH(レクサス・ダイナミック・ハンドリングシステム)は、かなり機敏に向きを変える。
また、V型8気筒5Lエンジンを搭載するスポーツ性の高いRC F、GS Fなどを用意できることも、プレミアムブランドの特権だ。価格は1000万円を超えるのでトヨタブランドでは設定しにくい。このほかスーパースポーツカーのLCも、レクサスならではのラインナップになる。
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今後は、ハイブリッド車や電気自動車が増え、自動運転に繋がる運転支援機能も進化する。一方で「運転して楽しい」とか「外観が格好良い」といった価値は薄れてくる。
だからこそ、これからはクルマが持つ趣味性を重視したプレミアムブランドの重要性が一層高まる。楽しくて憧れの対象になり得るクルマを今後も投入し続けて欲しい。
いわゆるブランド力もそこに芽生える。ブランドはユーザーの内側に存在するものだから、メーカーや販売会社がブランド構築に必死になっても成立しない。優れた商品とサービスの投入を続けて、徐々に成長してくる。
日本のレクサスも、この段階に入ってきた。
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