桁違いの人気を誇るトヨタ。2023年9月時点での登録車販売台数は、年累計で123万台を超えた。次点の日産(約21万台)・ホンダ(約19万台)とは、桁が一つ違う。なぜここまで人気が集まるのか。そして他メーカーと何が違うのか、考えていきたい。
文/佐々木亘、写真/TOYOTA、池之平昌信
■トヨタの人気を支える好循環とはなにか
トヨタの人気は、多種多様な商品バリエーションと高い品質、そしてメーカーの圧倒的な影響力によって、支えられている。
チャネル専売の廃止とともにラインナップを絞り込んだとはいえ、現在もコンパクトカーが6車種、ミニバン7車種、SUV11車種を展開。
他メーカーが不人気を理由に手を引き始めたセダンには5車種、ワゴンに2車種を据える。
さらに、GRモデルを中心にしたスポーツカーを多数取り扱い、ショーファードリブンを牽引するセンチュリーは2タイプに分かれた。
ざっと挙げるだけでも他メーカー2~3社分のクルマを生産している。
工業生産物の品質は、製造量に比例して向上するから、作れば作るほど製品の品質は均一になり高まっていくものだ。
高品質のものを大量に生産できるため、メーカーへの信頼は高まり、販売台数はさらに伸びる。トヨタは好循環を自ら生み出す集合体なのだ。
さらに販売・サービスにも抜け目は無く、他メーカーを大きく突き放す。
■販売面での他メーカーとトヨタは明確に違う
「技術の日産、販売のトヨタ」と言われた時代がある。現在も時折耳にするワードであり、昔からトヨタの販売力が抜きんでていた証だ。
トヨタの圧倒的な販売網は、既に読者の皆様ご承知の通りだ。圧倒的な国内シェアは、販売店舗数に裏打ちされたものと言っていい。
さらに注目したいのは、トヨタ販売店のほぼすべてを、トヨタ自動車株式会社とは別の資本が運営していること。
創業当初から全国各地の地場資本と協力し、地域に根付いた販売網を構築したことが、今日の人気につながっている。
メーカーの力に頼らない、何なら販売店がメーカーに物申す存在であることが、販売のトヨタの強さの秘訣。それぞれが個として対等に向き合っている。
販売店は経営が傾けば、メーカーからは切り捨てられるだけ、逆にメーカーは販売店にそっぽを向かれてしまっては、自社の商品が売ってもらえなくなるというリスクを持ち合うのだ。
この関係性が、国内トヨタを大きくしてきた。メーカー直系の販売店が多数を占める状況では、販売のトヨタは生まれていない。
トヨタの人気を生み出したのは、各地方で売り上げを高め、生きていかなければならない地場資本の力が大きい。メーカー系販社が比較的多いブランドとは、生存競争をした時の強さが圧倒的に違う。
こうした販売店主導の売りの仕組みを70年以上続けていることが、トヨタと他メーカーとの差だ。事実、各地のトヨタ販売店は他メーカーの販売店に比べ、地場の売り方を強く押し出す。
トヨタ販売店の売り方は、日本全国で同じように真似できるマニュアル的なものが少ない。地域の尖り具合が高まれば高まるほど、トヨタの売り方はツボに入り、その強さを存分に発揮していくのだ。
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