自動車がなかった時代から人の往来に使われてきた古い道。歴史ある道だからこそ、昔から公共交通機関の通り道として重宝されているイメージを抱く。では、すべての始まりの誉れ高い「1」を冠する国道1号線が経路になっているバス路線はどれくらいあるのか? ちょっと見てみる。
文・写真:中山修一
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■日本で2番目に長い国道
国道1号線は東京から大阪までを結ぶ道だ。延長にして約649kmもあり、大変長い道としても知られているが、距離的には東京〜青森間の国道4号線が約742kmあるため、1号は日本で2番目に長い国道ということになる。
名称が「1号」であるなら、日本で最初にできた1番目の国道と考えたくなるのが自然だ。ところが、記録が残っている日本最古の“国道”は、大阪府と奈良県を結んだ竹内街道・横大路(613年)と言われており、一部の区間が現在の国道166号線に相当する。
現在の国道1号線の基礎ができたのは1885年。「国道1号線」は、明治時代に道路が整備・管理され始めた以降にできた最初の国道、という意味合いでのファーストナンバーだ。
ただし、この1号線も元々は2号線だったのが後で1号に再割り当てされたりと、当初の状態を維持せず途中で変わりまくっているため、明治期に国道の先陣を切ったピュアな1号とは、今や言いづらくなっている。
■由緒正しい街道を走るバスとは?
いずれにせよ国道1号線は江戸風に言えば東海道でもあり、1号と命名される前から長い歴史を刻んでいるのは確かだ。そんな由緒正しい街道ゆえ、公共交通機関のメッカ的ルートに選ばれていそうな気がする。
一般道を走る公共交通機関の代表格は路線バスであるが、果たして国道1号線を経路に組み込んだバス路線は、漠然とした想像通りに実在するのだろうか?
少し考えてみたところ、すぐに目星がついた。神奈川県の超有名観光地・箱根エリアだ。箱根界隈の主要道路といえば国道1号線がガッツリ含まれる。さらに調べてみると、やっぱりバスが通っていた…。
■山を攻める路線バス
箱根エリアを走る路線バスで、国道1号線を通る系統は割とあるようだが、中でも有名どころに芦ノ湖方面への路線が挙げられる。ただし、電車で行った時とは異なり、箱根湯本ではなく小田原が拠点になる。
小田原駅の海側(東口)のバスターミナルと芦ノ湖の湖畔までを、箱根登山バス「H系統」と伊豆箱根バス「Z系統」の2事業者が、大型路線車を使ったバスを運行している。
およそ24kmの距離を、どちらも大体50分くらいで結んでいる。両者とも、小田原駅を出発して駅前通り〜国道255号線を650m程度走った後は、全て国道1号線のベタイチルートをトレースしていく、絵に描いたような1号を走る理想の路線バスと言える。
このH系統とZ系統……1号線は1号線でも駅伝のルートになっている、1875年にベースができた古い道を経由するのが大変興味深い。なにしろ登山電車、ケーブルカー、ロープウェイが揃っているほどの場所だ。
芦ノ湖の標高は724mで、対する小田原駅周辺は20m前後。自動車が通る道路でも急勾配急カーブは避けられない。自ずと山道を攻めることになるため、H系統とZ系統は、アグレッシブさにかけても路線バス中で随一の存在かもしれない。