クルマのヘッドライトといえば、以前は丸形もしくは角形が定番だった。しかし昨今は、薄い吊り上がった形が定番。トヨタをはじめ、レクサスや日産、三菱など、みんな「薄目」だ。なぜ「薄目」は増えてきたのか!? デザインの潮流というだけなのか!??
文:吉川賢一
写真:TOYOTA、MITSUBISHI、NISSAN、JAMA
薄目にすることで目元にインパクトをもたせている
近年登場した新型車の多くが「薄目」だ。トヨタ「クラウンスポーツ」や「クラウンセダン」、日産「アリア」や「ノートオーラ」、三菱「トライトン」や「デリカD:5」など、ヘッドライトでインパクトを持たせているクルマが非常に多い。
先日開催されたジャパンモビリティショー2023に出展されたコンセプトカーにおいても、レクサスのコンセプトカー「LF-ZC」やスバルの「スポーツモビリティコンセプト」、スズキの「eVX」、トヨタの「ランドクルーザーSe」「FT-3e」、トヨタ車体の「グローバルハイエース」、「X-VAN」など、薄目ヘッドライトのクルマは多かった。なかでも印象的だったのが、マツダのコンセプトカー「ICONIC SP」だ。リトラクタブルヘッドライトにもなっており、スタイリッシュなボディデザインとマッチして、斬新だった。
ただ、ホンダの「SUSTINA-C Concept」やダイハツの「ヴィジョンコペン」、メルセデスの「EQG」など、薄目とは対極となる、丸型ヘッドライトやデイライトを備えたコンセプトカーもあった。どちらも目もとにインパクトを持たせたいというデザイナーの意図が込められていると思われる。
LEDヘッドライトがクルマのフロントデザインを革新した
スタイリッシュでインパクトを持たせることができる薄目ヘッドライトだが、これが実現できるようになったのは、LEDヘッドライトが登場したから。LEDは、消費電力が小さくて寿命も長く、また、かつてのバルブ型ヘッドライトやHIDヘッドライトに比べてサイズが小さい。LEDライトを複数並べることで、ヘッドライトとして必要な光量を得られるようになり、ここ10年程で、LEDヘッドライトが一気に広がるようになった。
たとえばトヨタは、2012年~2020年頃までキーンルックをフロントマスクに多く採用していたが、2022年以降に出したクラウンクロスオーバーやbZ4X、プリウス、クラウンスポーツ、クラウンセダンなどでは、薄目のLEDヘッドライトを前提としたハンマーヘッドデザインを採用している。
LEDヘッドライトの登場によって、ライティングデザインの自由度が広がったのだが、自由度が広がったにもかかわらず、どのクルマもどことなく似た薄目デザインとなってしまっているのは、流行りのデザインだからであろう。デザイナーとしては、流行りのデザインを取り入れつつ、いかに他社車と差別化するかは、自由度が増えたぶん、悩ましいところであると思われる。
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