物流「2024年問題」よりも深刻!? クルマのハイテク化も影響……「整備士不足問題」現状と対策

物流「2024年問題」よりも深刻!? クルマのハイテク化も影響……「整備士不足問題」現状と対策

 自動車整備士の人材不足が問題視されている。これは今に始まったことではないが、若者のクルマ離れや、高齢化社会によって加速している感がある。「2024年問題」として物流の問題が巷間を騒がせているが、整備士不足の問題はそれを凌駕するほど深刻かもしれない。自動車整備士の現状について考察する。

※本稿は2023年11月のものです
文/広田民郎、写真/広田民郎、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2023年12月10日号

■整備士不足の現状

人材を確保するにあたり、資金力のない小さな整備工場のほうが状況は厳しく、廃業も出ている
人材を確保するにあたり、資金力のない小さな整備工場のほうが状況は厳しく、廃業も出ている

「6~7年前までなら、年明けあたりに整備学校の担当者に今春卒業する生徒を一人頼むよ、と伝えれば整備士補充は間に合っていた。でも今じゃそう簡単には来てくれない。おかげで人手不足で業務に支障をきたしているよ」

 そうボヤくのは、横浜市郊外で2名の整備士で専業整備工場を営むAさん。Aさんの工場のような、給与体系や待遇など、きちんとした情報を持っていない街の整備工場には、もはや若い人材が来ない。

 調べてみると整備士不足はかなり深刻だ。営業マン100名以上を抱える大手のカーディーラーですら、メカニック不足に苦しんでいるという。

 神奈川のトヨタ系ディーラーでは、年に約50名の新人整備士を募集するのだが、5~6年前から外国人整備士を導入して業務体制を維持している状態だ。

 一方、整備士を育成し、育成した整備士を社会に送り出す整備専門学校の担当者は、数年前から別の側面から『整備士不足』を痛いほど実感している。

 高校での進路ガイダンスのひとつである模擬授業に、自動車整備学校は呼ばれなくなった。若者のクルマ離れで高校生の整備士志望が極端に減少したからだ。

 代わりにユーチューバーやゲーマー、声優、お笑い芸人などの志向が増えたからだと見ている。

■外国人整備士への期待

労働力確保を外国人留学生に頼っているのは他業種と同じだが、整備業界はハードルが高い
労働力確保を外国人留学生に頼っているのは他業種と同じだが、整備業界はハードルが高い

 とにかく、即戦力となる優秀な整備士は喉から手が出るほど欲しいのが現状。それをリアルに物語るのが外国人整備士の導入だ。

 コンビニや牛丼屋、飲み屋ではもはや外国人店員が珍しくないが、部品数3万点と言われる精密機械である自動車の整備の場合、ハードルが一気に高くなる。

 自動車の整備を生業にするには日本語による国家資格が必要となる。クルマの修理はユーザーの心を癒やすという意味でも、ユーザーとのコミュニケーション力も必要だからだ。

 これをバックアップしているのが「技人国(ぎじんこく)」といわれる就労系在留資格である。「技術・人文知識・国際業務」の頭文字をとった制度で、外国人が高い技術を備え、日本で活躍することができる仕組みになっている。

 横浜にある自動車整備専門学校『横浜テクノオート専門学校』でも『国際エンジニア学科』というセクションを設け、1年で自動車の基礎と日本語能力を高め、さらに2年間の自動車整備科を履修。

 ここ6年ほどで累計60名弱の日本で活躍できる整備士を送り出している。

次ページは : ■なぜ整備士不足になったのか?

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