新型車の中には、発売時期や台数を絞り込んで販売されるクルマがある。特に台数の限定車は、その希少さも相まって激しい争奪戦が展開されていく。限定車の仕様を、通常モデルでオプションにしても良さそうだが、なぜ各メーカーは台数限定車を用意するのだろう。販売戦略や実際の売れ行きを深堀りしていきたい。
文/佐々木亘、写真/TOYOTA、BMW
■輸入車では当たり前だった台数限定 国内メーカーでは?
特別仕様車や台数限定車は、元々輸入車の専売特許のようなものだった。新型モデルの話題作りにもなる限定車は、ファーストエディションやローンチエディションなどと呼ばれる。
新型モデルの注文数を増やし、早くユーザーへ届けたいのがメーカー側の気持ちだ。しかし、輸入車ではユーザーのオーダーを聞いてから本国へ注文を出し生産すると、長い待ち時間が発生する。
そもそも注文が殺到すると細かなオプションに一つ一つ対応しがたいという側面もあり、こうした問題を解決するのが限定車だった。
初期販売の限定車では、最上級グレードにオプション全部乗せしたような、不足のない仕様が多い。それを500台なら500台、一気に製造してしまえば、製造・販売に関するロスタイムが大きく縮小できるのだ。
輸入車では以上のような理由があり、台数限定販売を定期的に行ってきた。
対して、国産モデルでは台数限定販売があまりなじみのない存在だったのだが、ここ数年、台数限定販売が増えると同時に、大きな物議を醸すことも増えている。
■なぜ限定車を作る? オプション展開ではダメなのか
国産モデルで、なじみがあるのは、特別仕様車であろう。台数限定はせずベースモデルに割安で人気の装備を付け、専用のエクステリアをおごるものが多い。
ヴォクシーの煌やヴェルファイアのゴールデンアイズのように、特別と言いながら毎回設定される仕様もある。ユーザーも登場を待ちわびており、もはやデフォルトのような特別仕様だ。
ただ国産車でも、一部のスポーツモデルで台数限定車の販売が増えてきた。世界チャンピオンを獲得したとか、生誕何十年記念といったタイミングでの発表となり、あっという間に売り切れてしまう。
こうした特別な装備の付いたクルマを台数限定にするのには理由がある。主に製造側で発生する問題が多数を占め、コストや工数の増加を避ける目的があるのだ。
台数限定車の仕様には、極めてニッチな要望に応えているものも多く、余分にかかるコストを販売で賄うことができないこともしばしば。オプション設定すると、作れば作るほど赤字になるということも多い。
ただ、少しでもファンに喜んでもらいたい。その一心で、国産車の台数限定モデルは企画され、製造に至っている。
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